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てぃくる 561 青と白 [てぃくる]


「何を見てらっしゃるんですか?」

「ああ、キョウチクトウをね。夏の花と言っても、盛夏より今頃の方がきれいだからね」

「なるほど。紅色のものより白花の方がお好きですか?」

「いや、赤は赤で好きだよ。ただ、空と合わせるなら断然白だな」

 杖を差し上げて、花の向こうの空を示す。



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「真っ青な空に真っ白な花なら、絵にはなるがおもしろくはない」

「へえー」

「空には濃淡があり、淡い青は対比に向かないんだが、その青があることで濃い青が映える」

「今日は雲がないから、くっきり花が浮きますね」

「まあね。雲があればあったで、それは味だがね」

「味、ですか」

「そう。花もそうで、真っ白でなくとも白は白さ。褪せて黄ばみ、翳って薄墨になるが、それとて白だ」

 差し上げていた杖を戻し、頭上の白い花と青空に言葉を与えた。

「同じ色に見えて、濃淡、明暗、清濁はある。それがわかれば、毎日同じものを見上げていても飽きないのさ」

「そうですか」

 話しかけてきた男は、これのどこが面白いのだろうというように黙って花と空を見上げていたが、何も言わずにそのまま立ち去った。

 改めて花と空を見上げる。

 面白さとか風情というものは、人に指南することでも分け与えるものでもない。しかし自他の違いを発見して、それを楽しめれば、味わえるものがもっと増えるのになと。

 ……そう思う。







  水羊羹のフィルム丸まり眠くなる







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