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二年生編 第80話(3) [小説]

気乗りしないまま北尾さんに連絡しようとしたら、いきなり
玄関のドアがどかーんと開いてりんが突っ込んで来た。

「おいっ!」

「うあえ?!」

いきなり胸ぐらを掴まれてびっくりする。

「おまい、しゃらに何した?!」

うが……そっちに行ったか。

「落ち着け、りん」

「落ち着いてられるか、ぼけぇ!」

ったく。

手を払いのける。

「昨日、ジェニーを連れて寿庵に和菓子作りの体験に行って
きたんだよ」

「おう」

「一色さんが、前から寿庵のお菓子を気にしてたから、いい
チャンスだと思って、体験一緒にやらんかって連絡を回した」

「ぼけっぱあのいっきが全員に流したやつだな。あほー」

「とほほ」

「とほほじゃないよ。それをしゃらに突っ込まれた、と」

「まあ、そういうことさ。例によって嫉妬爆発。でも、僕も
堪忍袋の緒が切れた」

「……」

「僕は友達の扱いを男女で変えない。それはりんが一番よく
分かってるだろ?」

「ああ」

「それはしゃらも知ってるはずなのに、こうやってぶち切れ
る。しゃらが不安なのは分かるよ。でも、僕はしゃらの飼い
犬じゃない!」

「……」

「と、しゃらに言ったとこさ。まあた間が悪いことに、さっ
き北尾さんからエスオーエスが来てね。その話を伝えたら、
余計機嫌悪くなったっちゅうわけ」

「北尾さんの方は、切羽詰まってるん?」

「本人的にはね。僕らにはなんじゃそりゃの話だろうけど」

「まだ相談受けてないんでしょ?」

「そだよ。でも、見当は付くもん」

「ふうん……。何?」

りんには話しとこうか。

「試験が急にきつくなったでしょ?」

「うん、えらい目に遭ったわい」

「当然試験前の対策で、頭のいい人んとこにはお助けコール
がいっぱいかかるわけよ」

「まあ、そだな」

「それが、リョウさんくらいのタフガイだったら何の問題も
ないんだけど、北尾さんだったら……」

「あ、なるほどねー」

「今までは期末終わればそれっきりだったのが、追試方式に
変わって延長戦が付いた。りんたちは最初のをクリアしたけ
ど、クリアできん子は次がどえらい試練になる」

「んだな」

「だから、すがる方も必死になるんだよ」

「あ、読めた。そういうのが北尾さんに張り付いちゃったっ
てことね」

「だと思うよ。たぶん沖田だろ。うちのクラスのとぼけた野
郎なんだけど、授業中寝倒すことで有名なんだ。あだ名は寝
太郎」

「へー」

「気取りのないいいやつなんだけどさ。あいつには、僕以上
にデリカシーがないんだよ。あいつは北尾さんをちゃっかり
利用してるんだろ。あいつも、どべはいやだから必死なのさ」

「げえー」

「北尾さんは寝太郎のあまりのずーずーしさに辟易してるん
だけど、それを本人の目の前では言えない。どうすべか……
ってことだと思うよ」

「なーるほどなー」

りんが、どすんとソファーに腰を下ろした。

「ついさっき、しゃらが泣きながらわたしんとこに電話して
きたんだよ」

げ。

「いっきを怒らしちゃった、どうしようってね」

「……」

「今までいっきが、なんだかんだ言ってもしゃらのわがまま
にはおうようだったから、びっくりしたんでしょ? いきな
り絶縁宣言食らったみたいに聞こえて」

「うー。僕にはそんなつもりはないんだけどなー」

「しゃらに、そう言ったらいいじゃん」

「……」

お互いの心の深いところに踏み込む、
その第一歩が……これか。

ふう……。

「とりあえず北尾さんと話して、それから段取り付けるよ」

「ここに呼ぶの?」

「そんな、火に油注ぐような真似はしないよ」

「うちでやれば? わたしやばんこが居てもいいんでしょ?」

「もちろん。オープンな方がいい。ばんこはクラスメートだ
から、北尾さんもやりやすいだろ」

「じゃあ、しゃらにもわたしから連絡回しちゃる。ジェニー
はどうせ日本語分からないから問題ないだろうし」

「んだな。じゃあ、これから北尾さんとコンタクト取るわ」

「ほい」

すぱっと。
りんが消える。

「持つべきものは友達ねえ」

「そう。しゃらも分かってると思うんだけどなー」

はあ……。

まず、北尾さんに電話。

「あ、北尾さん? 連絡遅くなってごめんね」

「いえ……」

「寝太郎のことだろ?」

「えっ?! ど、ど、どうして?!」

「分かるよ、そんなの。あいつもとことんずーずーしいから
なあ。いい加減にしてって言えないんでしょ?」

「……はい」

「まあ、みんなで相談しよ。うちの斜向いに土屋さんて僕の
伯母さんの家があって、そこでりん、ばんこ、しゃらが一緒
に相談に乗ってくれる。すぐこっち来てくれる?」

「……」

気後れするんだろうけど、僕はマンツーマンには乗れない。

「分かりました。ありがとう」

携帯を閉じて、でっかい溜息を付く。

「やれやれだ。ったく」

「姉さんとこに行くの?」

「そう。しゃらとがたがたしてる時に、余計な火種抱えたく
ないからね。りんにも先に話しといたから、短時間で終わる
でしょ。っちゅーか、終わらす」

「大変ねー」

「かなわんわ」

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