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二年生編 第80話(2) [小説]

冷麦をすすって、シャーベットを食べて。
お腹が落ち着いたところで、テーブルの上の携帯が鳴った。
誰かな?

「え?」

北尾さん?
どしたんだろ?

「はい、工藤です」

「あ、あの……北尾です。ちょっと……」

「なに?」

「相談が……あるんですけど……」

うんざりする。
しゃらともめたばかりの時に、また何か面倒ごとかー。

「急ぎ?」

「出来れば……」

口調だと、恋愛関係ってことじゃなさそうだな。
まあ、北尾さんにはまだそんな余裕はないだろう。
じゃあ、何かな?

「ちょっと待って。三十分後に僕からかける」

「あ、分かりました……」

一度携帯を閉じる。

どうするか。
さっき母さんに言われたことを思い出す。


 『生ぶつけりゃいいのよ』


そうだよな。
いつまでも、上っ面だけ触っててもしょうがない。
どっかでキツい話をしなけりゃならないなら、出来る時にす
るしかないか……。

「ふう……」

母さんが呆れ顔で僕に突っ込む。

「また女の子? 相変わらず引きが強いんだね」

「かなわんわ」

「誰?」

「北尾さん」

「あら。学校行ってるの?」

「まじめに来てるよ。だいぶ慣れた感じだし」

「なんの話?」

「それは後から。見当は付くけど」

「ヤバいの?」

「いや、そうでもないと思うけど、北尾さんにはキツいだろ
うなって話だと思う。たぶん、だよ」

「ふうん……」

「さて」

「うちに呼ぶの?」

「そんなん、大騒動になるよ。それでなくてもしゃらがぶち
切れてるのに」

「あ、そうか」

「これから交渉するさ」

「誰と?」

「しゃらと」

「げ!」

びっくり顔の母さんは置いといて、しゃらに電話する。

さて、覚悟を決めよう。
僕ら初の、大きなどんぱちになるかもしれない。
でも、それを乗り越えないと……僕らは続かないだろう。

「なに?」

相変わらず機嫌の悪いしゃら。

「ちょっと緊急に相談事が持ち上がった」

「何の?」

「しゃらやジェニーのことじゃないよ。北尾さんだ」

「……」

むっとしたんだろう。
昨日の今日なのに、なによそれ!
へそを曲げてるしゃらの機嫌を、完璧に損ねるサイアクのネタ。

でも、僕はあえてそれを振った。
ここをクリアできないと、僕はしゃらに踏み込めなくなる。

「ねえ、しゃら。ジェラシーもほどほどにしないと、僕は
しゃらのポジションを友達に戻さざるをえなくなる」

「……!」

「僕はしゃらの奴隷じゃない。僕には僕の考えや感情がある
し、いくら相手がしゃらでもそれを一方的にかきまわされた
くない」

「……」

歯軋りするような嫌な音が聞こえた。

「僕はしゃらを好きだし、これまで他の女の子によろめいた
り、浮気したことは一度もない。僕はモヒカン山で、しゃら
が僕を信じるって言ったことを一度も疑ったことはないよ。
だけど」

僕は語気を強めた。

「今みたいな態度をとり続けられたら、それを信じられなく
なる!」

しゃらの不安は分かる。
でも、今はそれを埋める手段はコトバしかないんだ。
どうしても、それを分かってもらいたい。
分かってくれないなら、分かるまで距離を置くしかない。

「僕は、しおんの時も、あっきーの時も、小野寺さんの時も、
ちゃんと自分でケリをつけてきた。しゃらと誰かを両てんび
んにかけたことは一度もない。これからもない」

「……」

「それを信じてもらえないなら、僕はこれ以上しゃらにアプ
ローチできない!」

そこで。
僕は携帯を切った。

しゃらに対して腹を立てたってしょうがない。
これはしゃらの心の問題。
僕に対する感情を、僕が変えさせることは出来ないんだ。

今までは、しゃらの感情の起伏をお互いになんとなく乗り
切ってきたところがあった。
決着がうやむやになってるんだ。

母さんに言われたように、僕が地を出さずに結果オーライで
やってきたツケが出てるってことなんだろう。

ふう……。

ソファーに倒れ込んだ僕を、母さんが呆れ顔で見下ろしてる。

「まあた、いきなり過激な……」

「しゃあないやん。何度言っても分からなきゃ、一度距離を
置くしかないもん。ほんとはジェニーが来てる時にこんなこ
とでもめたくなかったけど、溜め込んで後で爆発する方がや
だからね」

「今、爆発してるんじゃないの?」

「少なくとも、僕は感情に任せて言ったつもりはないよ」

「ふうん……」

「ただ、それをしゃらがどう受け止めるか。それは僕には分
からないけどね」

「じゃあ、これでもし御園さんがあんたに見切り付けたら、
それでもいいってわけ?」

「……」

それは……いやだ。
でも……。

「分からない」

「あんたも、めんどくさいとこは全然直ってないね。まった
く」

ぶつぶつ言いながら、母さんがキッチンに引っ込む。

しゃらの怒りに火が着くにしても、逆におろおろするにして
も、僕に電話してくることはないだろう。
僕は北尾さんの件をちゃんとしゃらに伝えた。
手続きは踏んだ。

あとは……しゃらにこなしてもらうしかない。

やれやれ、だ。

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コメント 2

reorio

私は、いまだに言えた事無いし、
これからも言えないと思う(>_<)
いっきみたいに言ったら、どうなるんだろう・・・
やっぱり、怖くて言えないや(−_−;)
by reorio (2012-10-21 18:21) 

水丸 岳

>reorioさん

コメントありがとうございます。(^^)

あー、わたしもかみさんには放置プレイされてます
ので、多分生涯言うことも、言われることもないかと。
それはそれで、幸せなのかな?(^^;;


by 水丸 岳 (2012-10-21 23:54) 

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