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てぃくる 321 ガス抜き [てぃくる]


「ストレスとか、不満不平とか、溜めすぎると破裂するんだよな」


「そうそう。だからガス抜きは大事だよな」

「でもよ」

「うん?」



fj.jpg

(フェイジョア)




漏れてる可燃性ガスに火ぃ着けるのって、ヤヴァくね?




(^^;;







抜いたのが、そのままどっかに消えてくれればいいんです
が、いつまでもそこらへんに漂っている危険性があります
よね。

引火する可能性のあるものは、それが微量であっても事故
のもと。くれぐれも取り扱いにはご注意を。






  闇を灼く蛍火煙草スマホの画(え)








Fire Meet Gasoline by Sia



三年生編 第60話(6) [小説]

「喫緊に何をしなければならないか。そのためには何が必要
か。どうすれば多くの関係者から理解が得られるか。それを
常に公開し、同意を得る努力をする」

「創始者の工藤くんだけでなく、現部長の鈴木さんも、極め
てその意識が高いんです。校長の私にだけでなく、美化委員
会の審査を受ける形になっていますから、他の部よりもずっ
と縛りがきつい。でも、彼らはその関門をちゃんとパスして
います」

「中庭はこの高校に在籍するみんなのものです。その公共性
をこれまで最大限に尊重してくれたからこそ、私は君らの活
動を黙認してきたんです。その意識は、今後もちゃんと維持
して欲しい」

「工藤くんには言ってありますが、プロジェクトが今後も極
めて微妙な位置付けであり続けることは仕方ありません。そ
のための制限もかかり続けます。ですが、活動を秘匿するの
ではなく常にオープンにして、みんなに分かりやすく、理解
しやすく展開していって欲しい」

「それが、学校の最高管理責任者である私の指令です。お願
いではありませんよ。指令です。その指令を無視したら、君
らの活動はすぐに休止させます。よろしいですね?」

し……ん。

さすが妖怪。
浮かれていた僕らに、強烈な往復ビンタを見舞った。

校長ー。でも、審査員の先生たちもこちこちに固まっちゃっ
てるよー。

わはは。

僕が苦笑しているのが目に入ったんだろう。
校長が、僕に水を向けた。

「工藤くん。何か言いたいことがあるかい?」

「いや、言いたいことじゃなく」

もう一度先生たちの前に出る。

「やましいことなんかあったら、こういう活動は出来ないで
すよ。今回の応募も鈴木さんが事前に校長のチェックを受け
てますし、プレゼンの中身もちゃんと審査を受けてます。で
も、だからこれしか出来ないとは僕らは思いたくない」

「うむ」

「欲しかったら努力して勝ち取れ! ぽんいちの校是である
自主独立の意味ですよね? それを忘れない限りは大丈夫か
な、と」

「ははは。そうだな」

僕は、審査員の先生に一つ例を出した。

「実は、バージョンツーになった時に僕らには出来なくなっ
たことが一つあります」

ここで、鈴ちゃんとバトンタッチ。

「はい。そうなんです。プロジェクトでは活動を三つの班に
分けてやってたんですけど」

「どういう班?」

滝本さんが、メモを取りながら鈴ちゃんに尋ねた。

「学校や生徒の意向を聞いたり、規則を確認したり、人の手
配や備品の管理をしたり、それが企画班です」

「企画っていうのとちょっと違うような」

「そうなんです。前はデザインが企画に入ってたので」

「ああ、そうなんだ」

「実際は調整班ですね。これから名前を変えようと思ってま
す。四方くんが全体調整のまとめ役。班長だと他班とのやり
取りが大変なので、部長以上に大きな権限を持たせて独立さ
せてるんです。だから、ただのマネージャーじゃなくて、
ジェネラルマネージャーなんです」

大向さんが、絶句してる。

「……大企業並みだな」

「実務班は、実際の庭仕事を一手にやります。今年からデザ
インも実務に入ったので、一番大変です。その分、やりがい
も大きいです」

「うん」

「もう一つがイベント班」

「へえー。イベント、ねえ」

「イベントを主催して中庭に人を集め、中庭への関心を高め
てもらおう。わたしたちが中庭に手を入れることを、みんな
にちゃんと理解してもらおう。それが目的の班なんです」

「うん」

「でも、中庭でのイベントをわたしたちが仕切ると、それは
わたしたちが中庭を私物化することになる。プロジェクト主
催のイベントは許可できない。校長から、ばっつり禁止令が
出てしまいました」

「え?」

三人の先生たちが、呆れ顔で校長を見る。
でも、校長はどこ吹く風。わはははははっ!

「新入部員のみんなは、これまでプロジェクトが中庭で主催
してきたイベントをすごく楽しんでくれて、自分たちもプロ
ジェクトに入ったらやりたいって考えてくれた子が多いんで
す」

「うん」

「それを禁止されてしまったら、モチベーションががくんと
下がりますよね?」

「そうよね」

先生たちは、一斉に校長に非難の視線を向けた。

「でも、それで諦めたら終わりです」

「交渉なさったの?」

「いいえー。校長がダメと言ったらダメです。それが規則で
すから」

「あらあ……」

「だけど、他の部が部活で中庭を使うことは出来るんですよ」

「あっ!」

ぽん!
滝本さんが手を打った。

「なるほどー! そういう手があるんだ」

「はい! 工藤先輩から素晴らしいアイデアをいただきまし
た。JV。ジョイントベンチャー方式です」

「いやいやいやいや。たまげたわ」

永江さんが、ぶるぶると首を振ってる。



三年生編 第60話(5) [小説]

「ははははは! こりゃあ、すごいや」

大向さんが、頭を掻きながら笑った。

「なるほどなあ。ガーデニングという枠には全然収まらない
のか」

「はい!」

鈴ちゃんは、ぐんと胸を張った。

「わたしたちは、賞が欲しくて応募したっていうより、うち
はこんなことやってるんだよーっていうピーアールをしたい
んです」

「うん。よーく分かる」

「ほんとのことを言えば、まだまだ課題ばっかです」

鈴ちゃんが、心配そうに後ろの後輩たちを見回した。

「わたしたちが先輩たちから引き継いだ執行体制や活動内容
には、まだまだ弱点があります。それを来年大勢の一年生た
ちが主人公になれるように、ちゃんと解消して行けるんだろ
うか」

「わたしたちや三年の先輩たちがああしろこうしろって言っ
たら、それはわたしたちの責任になっちゃいます。でもわた
したちが卒業していなくなったら、その責任が取れません」

「今がんばってる人が、主人公」

「わたしたち二期生は、今の新人さんたちにその意識をしっ
かり植え継いでいくのが一番大事な仕事かなーと思ってます」

「わたしたちは、なかなか先輩たちから自立出来なかったの
で」

鈴ちゃんは、照れたようにぺこっとお辞儀した。

二年生がすうっと引いて、大勢の一年生がぞろぞろっと前に
出て整列した。やっぱ壮観だよなあ。

緊張気味に前に出て来た江本さんが、先生たちにすぱっとお
辞儀した。

「新入部員代表の江本です! よろしくお願いします!」

「工藤先輩たちが過去、鈴木先輩たちが現在だとしたら、わ
たしたちはプロジェクトの未来」

「はっきり言って、わたしたちまだ入ったばっかで、何もよ
く分かってません」

「何が大事なのか、何をがんばればいいのか、やることはいっ
ぱいあるけど、それにどんな意味があるのか。まだまだ分か
んないことばっかで、とまどってます」

「でも楽しいんです!」

江本さんが両腕をぐいっと突き上げて、ぴょんと跳ねた。

「出来ることをやろうよ、じゃない。出来ることを作ろうよ、
なんです!」

「入ってばっかの最初の話し合いで、わたしアイデアを出し
たんですけど、それをすぐにプランに組み込んでもらえまし
た。わたし感動して、泣きそうになりました!」

「そっか、これがプロジェクトってやつなんだなって、そう
思ったんです!」

「だから、滝本先生が最初に疑ったことは、ウソなんかじゃ
ないです! ほんとに、ああやってるんですっ!」

江本さんが、大きな声で滝本さんに抗議した。
わはは、若いなー。

「今年は、いっぱい仲間がいます。わたしたち、がんばれば
先輩たちよりもっとすごいことが出来るんちゃう? 夢、いっ
ぱいです。それをなんとか実現させたいです。これからがん
ばります!」

おおーーっ!!!

一年生たちが、揃って拳を空に突き上げた。

それぞれに個性的なプレゼンだったと思う。
全部員が一丸になってるっていうことじゃ決してない。
でもプロジェクトは、みんなのやる気があればあるほどまと
まって、どんどん前へ進める。そういうシステムなんだよね。

エネルギーがある限り、なんかやろうぜ!
そういう部活なんだってことが先生たちに分かってもらえれ
ば、僕はそれでいいかなーと思う。

僕らのプレゼンが終わったところで、安楽校長がマイクを要
求した。
江本さんが、さっとマイクを渡す。

「校長の安楽です。審査委員の先生には当校の庭をご覧いた
だき、誠に光栄です」

校長が、ゆっくりと先生たちに会釈する。

「そして、私の方から一言だけ申し添えておきます」

なんだろ?

「当校では、プロジェクトの活動を公式に後援したことは一
度もありません」

三人の先生が、ぎょっとした顔をする。
まあ、そうだろうなあ。
そこも、うちはものすごーく異質なんだよね。

「部活は生徒の自主的な活動ですが、学校側はそれを監督、
指導する責任があります。決して、子供たちだけで好き勝手
にやってよろしいということではありません」

「ましてや、中庭は学校の施設です。その保守、点検、管理
は学校側の専任事項であり、本来生徒が手を出せる領域では
ありません」

先生たちが顔を見合わせた。

「当然のことながら、プロジェクトの活動は学校側の管理事
項に対する越権行為であり、その活動がどれほど献身的で
あっても看過出来ないのです。それなのに、なぜ限りなく黒
に近いグレーな活動を私が黙認してきたか」

校長が、ぐるっと僕らを見回した。

「それは君たちの活動の透明性が、極めて高いからです」




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三年生編 第60話(4) [小説]

「ミステリーとチャレンジ。僕は最初にプロジェクト設立に
向けて旗を振りましたけど、それは義務感からじゃありませ
ん。知らないこと、出来ないことに挑むプロセスが、うんと
こさ楽しかったからなんです」

「ちなみに、プロジェクトっていう名前を考え出したのは、
僕じゃありません」

僕はしゃらを呼んだ。
めっちゃ照れてるしゃら。もじもじもじ。

「うう……」

「彼女、御園さんが、この名前の提唱者なんです」

「ええええーーーっ!?」

一、二年の部員が全員のけぞって驚いてる。

「わははははっ! こういうのも楽しみの一つですよね。分
からないことがあれば、きっと知りたくなる。それが分かれ
ば、きっと分かったことを使いたくなる」

ざっ!
初代のメンバーが、サポーターも含めて全員整列する。

「初代の僕らが掲げた目標は、中庭再生です」

「見捨てられていた中庭に、もう一度命を吹き込みたい。そ
のために僕らが出来ることには、何にでも挑もう。目標完遂
型の活動ですから最初は完全に手弁当のボランティアで、再
生が完了すれば解散です。だからプロジェクト、なんです」

「うわ……」

審査員の先生たちが絶句してる。うひひ。

「そして、中庭再生を成功させるためには、どうしても学校
の先生や生徒に中庭に注目してもらう必要がありました。そ
のために僕らが掲げたテーマは……」

「中庭に心を植え、心を育て、心を繋ぐ、です」

「そして、テーマは今でも変わっていません。まだ全然達成
出来ていないからです」

「達成出来ていない以上、僕らはまだまだ挑み続けなければ
ならない。それが僕ら一期生の活動の歴史であり、後輩に残
せる財産かなと思っています」

僕は一礼して下がり、鈴ちゃんと交代した。

ぺこりと先生たちにお辞儀した鈴ちゃんは、苦笑しながら話
を始めた。

「ほんとに……工藤先輩には驚かされます。今日初めて聞い
た話がぽんぽんと出て来ました」

わはははははっ!

「でも、先輩がそうした理由が、今になってよーく分かりま
す」

「二期生のわたしたち」

ざっ!
四天王と二年生部員が勢揃いする。

「工藤先輩をはじめ、三年生の先輩方にずっと言われてきた
ことがあります」

「今。今のわたしたちが主人公なんだよ」

「そうなんです。わたしたちは、先輩から偉そうに指図をさ
れたことがないんです」

おおおっ!
先生たちが驚いてる。

「それが、このプロジェクトのいいところであり、すごいと
ころだと思います。アイデアを出し、率先してみんなを引っ
張り、何かを達成したって感じれたら、その人が主人公なん
です」

「だから、このプロジェクトでは決まった型っていうのが何
もありません。それをわたしたちが本当に理解できるまで、
一年かかりました」

「工藤先輩からバトンを受けた時は、正直気が重かったです。
わたしなんかに出来るんだろうかって」

「でも、僕らはやりたいことがあるからやってきた。君たち
がやりたいことはなに? どんなことをして、主人公になろ
うと思ってる? 先輩たちは、がんがん煽るんです。それは
すっごい刺激的でした!」

「今回のコンテストの応募も、先輩たちにはどうするか相談
していません。わたしたちで企画して、どういう風にやるか
を決めてきました。その責任は今のわたしたちにあり、こう
やって庭を見ていただける喜びも、わたしたちが一番強いで
す!」

おおおっ!

二年生たちが、揃って拳を突き上げた。

「もちろん、いいことばっかじゃないです」

鈴ちゃんが、厳しい表情でぐるっとみんなを見回した。

「生き物を扱ってるっていう責任感と、ちゃんとみんなで意
見を出して、調整して、プランまで持っていく能力が必要で
す。そして……」

「中庭がこのプロジェクトの持ち物じゃないっていう制限を、
これからどうこなしていくか。それはわたしたちにとって、
すっごい重たい課題だと思ってます」

「うーん……すごいなあ」

滝本さんがうなってる。

「工藤先輩が始められた時にはボランティアだったプロジェ
クトは、わたしたちが入部する時に部になりました。ボラン
ティアっていう続けにくい形ではなく、ちゃんと執行体制が
整っている部活でやろう。それが工藤先輩が部長の時のバー
ジョンワン」

「え?」

滝本さんが、びっくり声を出した。

「じゃあ、今は?」

「わたしが部長になった時点で、バージョンツーになってま
す」

「わあお!」

「庭のお花たちをずっと同じ形で育てられないように、わた
したちの意識も自分たちが一番主人公になれるように、毎年
植え替えて行きます」




三年生編 第60話(3) [小説]

鈴ちゃんは、きびきびと説明を続けた。

「ハードガーデンプロジェクトは、初代の部長だった工藤樹
生先輩が二年半前に始めたまだひよこの活動です」

「ええええっ!?」

審査員の先生たちが、揃ってのけぞって驚いた。

「ですから二年生のわたしは、工藤先輩がこのプロジェクト
を始められた時のことはリアルタイムでは知らないんです」

「活動の過去。プロジェクトがどうして出来て、どんな風に
活動を始めたか。そこはプロジェクト創始者の工藤先輩に説
明していただこうと思います」

鈴ちゃんと江本さんがすうっと後ろに下がり、代わりに僕を
含めた三年生のメンバーがぞろっと前に勢揃いした。

僕が前に出て、先生たちに一礼する。

「今日は、遠方からこの中庭に会いに来てくださって、本当
に嬉しいです。きっと、中庭もすごく喜んでいると思います」

僕が変なことを言ったので、三人の先生が顔を見合わせてきょ
とんとした顔をした。

「僕がぽんいちに入学した時。この中庭は荒れ放題でした」

「えっ!?」

「それも、ちょっとの間美化活動をサボってたからなんてい
う生易しいものじゃありません。五十年以上もの間、この中
庭は誰からも見捨てられていたんです」

審査員の先生が、信じられないという表情で安楽校長を見る。
でも、校長は笑顔でそっぽを向いてる。

「もちろん、それには理由があります」

僕は中庭入り口に立っている先生たちの方ではなく、渡り廊
下の方を向いて、大きく手を広げた。

「高校の創立当初から、ここは見せるための庭ではなく、慰
霊、鎮魂のための庭。ずっと、そう位置付けられていたんで
す。イメージは、立ち入ることが出来ない鎮守の杜ですね」

「ええーっ!?」

初めて事実を知った一、二年生が、ものすごくびっくりして
る。いひひ。

「ですから、庭を彩る美しい花や整えられた造作、安らぎと
か開放感。そういう浮ついたものがここにあってはいけな
かったんです。でも、それは最初から僕らに分かっていたこ
とではありません」

先生たちの方に向き直る。

「この高校に入学した時、僕は荒れ放題だった庭がかわいそ
うだなと思ったんです。僕がプロジェクトを立ち上げるきっ
かけは、そんなシンプルな動機です」

「高校に入って何か部活をしたいなと思ってた僕が、まず一
人でも始められそうなこと。それが、中庭の整備だったんで
すよ。それが僕のオリジナルな部活になるから」

審査員の先生だけじゃなくて、一、二年生も揃って絶句。

「ねえ? いかにもそれまでずーっとぼっちだった僕が考え
そうな、卑屈なことでしょう?」

僕は、にやっと笑って中庭にいる人たちをぐるっと見渡した。

「中庭に手を入れるにはどうすればいいか。入学したばかり
の一年坊主に、そんなの分かるわけがありません。まず、ど
うやったら庭をいじらせてもらえるのか。僕の部活は、たっ
た一人で、何も分からないところからスタートしたんです」

一度深呼吸して、息を整える。

「僕は、どうしたら中庭をいじらせてくれるのかを校長に直
接聞きに行きました」

ぎょえええっ!?

一年生がのけぞって驚いてる。くす。

「その時に安楽校長から、中庭をいじるための条件を三つ出
されたんです」

「条件、ですか?」

滝本さんが真剣な表情で復唱した。

「そうです。それをクリア出来ない限り、学校側では君に中
庭をいじらせないよ。はっきりそう言われました」

「どんな条件?」

「一人で庭をいじるな。ノウハウを残せ。中庭を実効支配し
ていた事務長を自力で説得しろ」

「うわ」

「何も知らないへたれの一年坊主に、そんなの出来るわけな
いじゃないですか」

「そうね」

「でも……出来ちゃったんです」

「なぜ?」

「この中庭が、とんでもなく謎だらけで、変だったからです」

「あ! それがさっきの……」

「そうなんです。僕は中庭をいじりたくてしょうがなかった。
でもそうするためには、なぜ僕らが中庭にタッチできないの
か、その不思議を解明しないとならなかったんです」

僕はしのやんを呼んだ。

「僕の素晴らしい相棒です。篠崎くん。彼はミステリー好き
で、物書き志望なんです。僕の謎かけに、ぱっと飛びついて
くれました」

「ほう!」

ミステリー班招集!

「篠崎くん、佐藤さん、伴野さん、御園さん、マイアーく
ん、千賀さん、そして僕。中庭の謎をおもしろがって最初に
集まってくれた友達。その手助けがあって」

「謎解きをすることで、事務長の説得が成功しました。そ
う、プロジェクトの始まりは美化じゃない。わくわくミステ
リーだったんですよ。そしてね」

僕はぐるっとみんなを見回す。

「五十年以上誰も中庭の整備に成功していないなら、それを
成功させてみたいと思いません?」

部員が、みんな頷いた。




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三年生編 第60話(2) [小説]

そうか。
会長が予想した通りだ。学校の先生が一人も入ってない。
なるほどなあ……。

鈴ちゃんが審査員の先生たちの前に一歩進み出て、もう一度
深々と頭を下げた。

「わたしは、ハートガーデンプロジェクト部長の鈴木則子と
言います。今日はよろしくお願いします!」

鈴ちゃんを挟み込むように四方くんと菅生くんが前に進み出
た。

「僕は副部長の菅生君彦です。よろしくお願いします」

「プロジェクトのジェネラルマネージャーをやってる四方透
です。よろしくお願いします!」

審査員の先生たちが、四方くんの肩書きを聞いて、おーっと
驚いてる。わはは。

鈴ちゃんが、僕らの方を一度振り返ってから、説明を追加し
た。

「プロジェクトは現在部員が72名。顧問の中沢先生と、あ
とはサポーターという構成になっています」

僕らは全員でゆっくり頭を下げた。

「サポーター……ですか?」

滝本さんていう女の人が、審査委員長なんだろう。
鈴ちゃんの説明に小首を傾げた。

「ええと、そこは、後で初代部長の工藤先輩から説明がある
と思います」

「分かったわ」

プロジェクトの執行部の紹介が終わったところで、審査員の
先生にハンドマイクが渡された。

僕らは、審査をどんな風にするのかを聞かされていない。
プレゼンの準備はがっつりしたけど、それが出来るかどうか
もまだ分かんないんだ。
先生たちがどんな審査をしようとするのか、どんなオーダー
を出し、どんな質問をするのか、まだ何も分からない。

どきどきの瞬間。

滝本さんが、マイクを握って笑顔で僕らに話し掛けた。

「こんにちは!」

全員で声を張り上げる。

「こんにちはーっ!!」

「おおっ、やっぱりみんな元気がいいわねえ! 気持ちがい
いです」

にこにこ笑いながら、滝本さんが話を続ける。

「本日こうしてお邪魔しましたが、実はわたしたちの審査は
もう終わっています」

げ……。

場が凍りついた。

「庭というのは、印象が全てです。わたしたちが見た時にど
ういう印象を受けたか。それだけなんです。説明も配慮も要
りません」

……。

「……なんですけどね」

おとと。

「今回こちらにお邪魔させていただいたのは、そういう印象
の枠に収まらない大きなエネルギーを感じたから」

うん!

「正直、庭のデザインや完成度という点ではまだまだ物足ら
ないのは事実です。ですが、ビデオで見せていただいた造営
までのプロセスがとても衝撃的でした」

滝本さんの言葉に、他の二人の先生も大きく頷いた。

「本当? あのビデオで紹介されていたプロセスって、本当
なの? わたしたちはヤラセじゃないのかって疑ってます」

うわ、挑発するなあ。

「ぜひみなさんのエネルギーで、わたしたちの疑いをぶっ飛
ばしてください。楽しみにしてます!」

うまい! さすが、審査員をするだけあるなあ。

滝本さんの最初の一撃で青くなってた鈴ちゃんは、気持ちを
さっと立て直した。

「分かりました! さっそくプレゼンさせてもらっていいで
すか?」

「よろしくね」

「はい!」

鈴ちゃんがさっと手を上げたのに呼応して、僕と江本さんが
前に出る。

「まず、なぜわたしたちの活動にプロジェクトという名前が
付いているのか。そこからプレゼンを始めたいと思います」

審査員の先生たちは揃って頷いた。
そうなの。応募した書類やビデオには、なぜプロジェクトな
のかという説明は一切入ってない。

四方くんが中心になってまとめたビデオでは、最初はプロジェ
クトが出来た理由、つまり『過去』が入ってたの。
それを僕としのやんが全部削らせた。

新入部員の確保じゃなくてコンテストの応募のためなら、後
ろ向きの部分を見せるのはかえってマイナスの印象を与える
よって。
それよか、鈴ちゃんや四方くんの『今』をばっちりカッコよ
く見せた方がいい。

だから今鈴ちゃんたちがやってる合意形成やプランニングの
プロセス、作業風景は丁寧に撮影されてるけど、昔の話は一
つも出てこない。

プロジェクトっていう名称と、今の姿とは必ずしも一致して
ないんだよね。
部長会でも突っ込まれたみたいに、なんでプロジェクトなの、
部じゃダメなのっていう疑問符が付いて回る。
でも、そこをミステリーのままにしておいた方がおもしろい
じゃん!

今回の受賞では、間違いなくそこがキーポイントになったん
だ。僕や鈴ちゃんにとっては、してやったりなんだよね。

先生たちが来られてる今。
今こそ、そのミステリーの謎を解こう。

それは先生たちへのアピールであると同時に、一、二年生た
ちにこれまでの経緯をしっかり教える大事な機会でもあるん
だ。
何があったかが問題なんじゃない。それをどう乗り越えたか
が重要なの。そこをきっちり見せたい。



三年生編 第60話(1) [小説]

7月7日(火曜日)

いよいよXデイ。
ぽんいちの中庭の特別審査の日が来た。

審査は学校のカリキュラムの邪魔にならないようにって、普
通は昼休みか放課後に設定されるらしいけど、安楽校長が四
時限を全学年全クラス自習にするっていう粋な計らいをして
くれた。

プロジェクトのメンバーだけが勝手にやってることじゃない。
学校側も生徒も、みんな中庭に関心を持ってるっていうこと。
それをきちんと見せたいっていう校長の説明だった。

安楽校長。
ありがとうございます!

審査員の方たちは11時に校長を表敬訪問して、校長と顧問
の中沢先生の案内で中庭に移動し、11時15分から審査を
始める。

プロジェクトメンバーはホスト役ということになるので、自
習の義務を解かれて11時から準備と対応、プレゼンに当た
るんだけど……。
準備と本番合わせても、実質二時間ない。
まさに短期決戦だ。

昼休みにはミニイベントも同時開催するから、頼むから雨降
らないでくれっていうのが僕らの心の底からの願いだった。
部員総出で何百個もてるてる坊主を作って、中庭に張ったロー
プにぶら下げた。

昨日は一日中雨降りでどうなることかと思ったけど、今日は
分厚い曇り空ながらなんとかこらえてる。
天気予報ではこれから回復傾向って言ってたから、本番はな
んとか雨の心配はなさそう。
てるてる坊主にずぶ濡れになってもらった効果はあったみた
いだ。

朝一で僕とみのんとでてるてる坊主を撤去して、イベ班にバ
トンタッチ。短時間でセッティングに取り掛からないとなら
ないイベ班は、これから大忙しだ。
しゃらもちっかも、大声で下級生に指令を出しながら忙しそ
うに走り回ってる。

んー。そこが僕的にはどうも……なあ。
牽引役が違うじゃんか。それは黒ちゃんの仕事だぞー?

「ふう……」

結局しゃらはこの前の僕の懸念をもっともだと考えてくれた
みたいで、茶華道部の板野さんにクレームをつけさせる作戦
をぎりぎりで回避した。
それで、一年生たちを直接どやすことにしたらしい。

あんた方、プロジェクトを潰すつもり?
わたしたちはもう卒業だからそれでも構わないけど、まじめ
な部員に恨まれるよって。

そういうネガな材料で引っ張るのは感心しないんだけど、本
番直前ならそれくらいやらないと効果がない。
今のイベ班の子が全員やる気ないっていうならともかく、一
人でも責任感のある子がいるなら、その子に旗を振らせるし
かないからね。

部員数だけぶくぶく膨らんで、中身が無責任なお客さんばか
りになってしまうんじゃ部活の意味がないもん。

実務の仕事はもう終わってる。あとはプレゼンだけなんだ。
だから今のイベ班の子だけでなく、手の空いてる人は全員ミ
ニイベントの補助に回ってもらう。
そして、今のイベ班の子にその作業を全部仕切らせることに
したって。
うん。それはすっごくいいアイデアだと思う。

仕切るっていうのは簡単に出来るように思うけど、結局自分
から率先してやらないと誰も動いてくれない。
そういうのは、自分がその立場にならないとなかなか分かん
ないんだよね。

しゃらとちっかがまとめた膨大な作業リストを見て、だらけ
てた子らはぎょっとしたらしい。
ちょっと、これ全部わたしたちがやるのって。
ばかたれが。少しはしゃらたちの苦労を思い知れって。

おもしろいなあと思ったんだけど、そこで真っ先に気持ちを
切り替えたのは、女の子じゃなくて男の子たちだった。

二年生の四天王と同じで、やっぱり男の子の方がプレッシャー
に強くて、いざという時に馬力が出る。
すぐに小さなグループに固まっちゃう女の子と違って、一人
でもがしがし動くんだよね。

新人歓迎会の時に、最初に僕のいるテーブルに来た高橋くん
て子。
その時は大人しくて引っ込み思案かなあと思ったんだけど、
そんなことはなかった。
一切文句を言わないで、他の男子部員を巻き込んでばりばり
仕事をこなし始めた。

女の子トップで仕切る、仕切られるの関係が出来ちゃうと、
それが微妙に感情に跳ねるんだけど、男の子が引っ張ると女
の子は逆に割り切るんだ。しゃあないかあって。
そこらへんがすっごい不思議。

僕は、男の子だから女の子だからって見方はあんまりしたく
ないんだけど、現実として自然に男女での役割分担が出来て
くる……というか出来てしまう。

まあ、それは流れに任せるしかないよね。

しゃらとちっかの全力サポートはあったけど、無事に他部と
の打ち合わせや準備を済ませて本番に臨めることになった。
やれやれだ。ほっとする。

そしていよいよ本番。
11時集合の全部員が持ち場をもう一度点検して、委員の先
生たちが中庭に来るのを待ち受ける。

やっぱ……緊張するよなあ。
不安と期待が入り混じった状態で、そわそわしながら中庭で
待機していた僕らのところに、校長と中沢先生が何人かの人
を引き連れてやってきた。

男性が二人と女性が二人。四人か。
でも男の人の一人はマスコミの人みたいで、ばしゃばしゃ写
真を撮りながら校長と話をしてる。
きっと、取材なんだろう。

ってことは、審査員の先生は三人か。
みんなそこそこの年齢だな。あらふぉくらいかな。

校長が鈴ちゃんを手招きした。
ぱっと走っていった鈴ちゃんの後ろに、ぴったり四方くんと
菅生くんが付いていく。

鈴ちゃんたちが、三人揃って先生たちにぺこっと頭を下げた。
僕らもそれに合わせて丁寧に一礼する。

最初に校長から、審査員の先生たちの紹介があった。

「本日、本校の庭の審査をしてくださるのは、ガーデンデザ
イナーの滝本早百合さん、株式会社アーバングリーン設計部
主事の大向(おおむかい)智治さん、そして株式会社緑水園
の企画開発課長の永江久美子さんです。くれぐれも失礼のな
いようにね」

「はい!」

鈴ちゃんが、元気な声を張り上げた。




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ちょっといっぷく その152 [付記]

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

しばらくてぃくるでしのいでお弁当を作るつもりでしたが、
思ったほど作業が進みませんでした。とほほ。

それでも、いつまでも中休みというわけにいきませんので、
これから三話ほど話を進めます。どれも、そこそこボリュー
ムがあります。


           −=*=−


弓削さんのケアをめぐってぎくしゃくしてしまったいっきと
しゃらですが、率いてきたプロジェクトの高校ガーデニング
コンテスト入賞が決まり、全体としては運気上昇中。

その勢いのまま、ガーデニングコンテスト審査員による中庭
実査を迎えることになりました。
もっとも、三年生部員は部活の最前線からすでに退いていま
すから、後輩たちのお手並み拝見と言うことになるんです
が……。

一、二年生といっきたちとでは、経験値が全然違うんですよ
ね。その差がプレゼン絡みで吹き出してしまいます。
さあ、それは何か。

そしてプレゼン絡みの諸事だけでなく、もう一つ厄介な問題
がいっきとしゃらに降りかかってきます。
その様子を、第60話から第62話までまとめてお届けいた
します。

それにしても、なかなか視界良好ってわけにはいかないです
ね。まあ、作者のわたしがそれだけ底意地悪いってことなん
ですが。いひ。


           −=*=−


さて。
ちょっと、本小説の話から逸れます。

現在わたしが作文を展開しているサイトは三箇所。
アメブロに本館があり、中長編小説用のミラーサイトとして
カクヨムを使っている他に、別館としてここを運営していま
す。

それぞれに一長一短あるんですが、一つだけ明確な違いがあ
るなあと思うようになりました。
それは、ブログと投稿サイトの差です。

ブログは、基本著者が他サイトの読者なんです。中には書く
だけもしくは読むだけという方もおられますが、多くは自ら
ブログを書き、他のブロガーさんの記事も読みにいく……そ
ういう相互交流スタイルなんですね。
有名人が運営しているブログを除けば、かなり作者と読者の
数が釣りあっていると言えます

ところが、カクヨムのような投稿サイトでは、圧倒的に書き
手(作家)の方が多い。猛烈な数の作家と作品がありながら、
そのほとんどが誰の目にも留まらずにたなざらしになってい
ます。

つまり、作品の出来不出来よりも広報活動の熱心さで評価が
動いてしまう。作品のクオリティを左右するはずの第三者評
価に、ものすごく恣意的なバイアスがかかるんです。

ブログの記事は、検索でヒットする可能性もありますし、同
じサイトのブロガーさんから見てもらえる確率が高い。もち
ろんクオリティのばらつきはあるでしょうけど、読者さんが
つきやすいんですよね。

どれがいい悪いという話ではなく。
どんな目的で書いたものを公開するかを考え、それに合った
プラットフォームを使えということなんでしょう。

別館として、ここソネブロで展開している本小説は、脱稿時
に五百万字を超える予定の長大な作品なので、ミラーを作っ
たり別の形式に整形するという作業がほぼ困難になっていま
す。
ですので他のプラットフォームに浮気することなく、脱稿す
るまでこちらでじみじみと展開していくことになるでしょう。

わたしのライフワークとして始めた本小説も、ぼちぼちゴー
ルラインが見えてきました。
ソネブロでの温かい交流を推進力にして書き続けてきた話で
す。最後までお目通しいただければ、本当に嬉しいです。



ご意見、ご感想、お気づきの点などございましたら、気軽に
コメントしてくださいませ。

でわでわ。(^^)/



gb.jpg



「希望の成れの果てか」

「何言ってんの。花が終わったここからが、真のスタートよ。それこそが希望でしょ」




ガーベラの花の後。さあ、希望を繋げられるでしょうか。



てぃくる 320 そこに山があるから [てぃくる]



なぜ山に登るのか?

 そこに山があるから。




「俺に登れるもんなら登ってみやがれ!」

 ほう、大きく出たな。

「おう! 俺は山じゃないからな。枝折れるで」






icho.jpg





(^^;;







イチョウの大樹。こんもりと茂りますね。
そのサイズの割には材が軽軟で耐久性に乏しいため、構造
材としてはあまり適していません。

でも。
イチョウはそれ自身が、大きな山を乗り越えてきましたね。
そう、イチョウは生きた化石として有名な植物。
長い年月という巨大な山を超えて、今に至ります。
残念ですが、人間の歴史はその足元にも及びません。







  沢水を水筒に入れ夏登山








The Climb by Miley Cyrus



てぃくる 319 終わった終わった [てぃくる]


「残業させないって方針じゃなかったっけ?」
「まあ、片付いたからいいじゃん。終わった終わった」
「それもそうか。でもさあ、これから飲みに行くには遅いよね」
「電車が終わっちゃう」
「でも直帰して、そのままビニ弁食べて寝るのは……なあ」
「女、終わってる」
「カレシとは?」
「もう終わった」
「何か終わってないもの、ないの?」
「地球」
「人類は?」
「とっくに終わってる」





moke.jpg

(^^;;








まあ。終わった分だけ始めれば、帳尻は合います。
そう考えましょ。







   笹船に水菓子乗せて雨果てる








The End by Pearl Jam