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よいお年を [付記]


大晦日になりました。
毎年同じことを言ってるような気がしますが、一年経つのが
本当に早いです。

ぐりーんふぃんがーずくらぶ日誌も、掲載を始めてから足掛
け六年が経過しました。一応、執筆計画の上では残り百話く
らいで脱稿になるはずなんですが、なかなか思うように書き
進められていません。(^^;;

その反省も込めてちょこっと今年を振り返り、年末のご挨拶
に代えたいと思います。


           −=*=−


今年は、三年生編前半に当たる第十八話から第四十五話まで、
二十数話のアップにとどめました。本当は、もう少し進めて
夏休み前まで終わらせておきたかったんですが、執筆作業の
方が全く追いつきませんでした。

来年は、少なくとも今年より多い話数を公開して行きたいな
あと考えていますが……どうなるか分かりません。
現時点で書き上がっているのは夏休みの後半まで。そこから
十月の最後の学園祭くらいまで一気に書いてしまいたいんで
すが……。微妙です。

執筆が滞っている原因は、昨年同様本館での執筆量増加です。
今年は、本館で不定期連載している二本の長編の続きを書い
た他、十万字超の読み切り長編を三本書き上げました。
その反動が、別館のここにがっつり跳ねてしまったわけで。

やっぱり、あっちもこっちもは出来ませんね。(^^;;

来年はこちらへの時間配分を増やすつもりですが、本当にそ
う出来るかどうかは蓋を開けてみないと分かりません。
しばらく綱渡り状態が続きそうな……気配です。


           −=*=−


本編の内容について。

三年になってすぐ沢渡校長とのハードな激突があって。今年
アップした分では、そのダメージからの立て直しプロセスを
中心に展開してまいりました。
全体としては独立した小ネタが多く、細切れのアップでもそ
れほど違和感はなかったかと思います。

ただ……このあとの第四十六話以降は、話がぐんと重くなり
ます。

自分の進路のこと。しゃらとの今後のこと。
いっきにとって、未来の青写真をそろそろ具体化しないとな
らない大事な時期なんですが、その覚悟に水を差すようなと
んでもない事態が起こってしまうんです。

いっきとしゃらの人格形成にも強く影響するアクシデント。
重要なエピソードになりますので、そこは拙速に展開せず、
じっくりお届けするつもりです。


           −=*=−


本年も、超スローペースの更新に辛抱強く付き合ってくださっ
たみなさんに、主人公のいっき、しゃらともども心より御礼
申し上げます。

年が改まりましても、旧年と変わらぬご愛顧のほど、どうぞ
宜しく御願い致します。m(_"_)m



                    筆者敬白



hmh.jpg
(ヒメハマナデシコ)













We Are One by Kelly Sweet

 


てぃくる 283 依存 [てぃくる]


依存? そらあちゃうわ。
わいが頼っとんのは、運んでもらうとこだけやからな。

あんたかてそうやろ?
アマゾンでなんか頼んで、それえ倉庫まで取りに行くか?
行かへんやろ。運んでもらうやろ。それと同じや。

わいも、そこだけはどうにもならへんねや。
だから、ひっついて運んでもらうねん。




rs.jpg



いや、あんたなんか誰も頼んでないし!



(^^;;





ラセンソウの実。いわゆるひっつき虫ですね。

さて。
依存と全依存はちょっと違いますね。
誰にも頼らないなんてことは、絶対に出来ないわけで。
偉そうに俺は独立独歩だと言う人ほど、人の助力を足蹴にして搾取に励んでいたりします。

バランスの問題はともかく。
依存すること、依存されることで、生物の世界は成り立っています。
わたしたち人間だけでなく、全ての生物がね。

かつてよく喧伝された強いものだけが生き残るという学説は、現在は明確に否定されています。
生物同士を系として繋ぎ合わせているシステムは、そんなに単純じゃないんですよ。(^^)






  枯野にて貼り付けられし通行票








Can't Depend On Love by Gordon Lightfoot

 


てぃくる 282 ぼろ [てぃくる]



ぼくは さいしょから ぼろだった わけじゃない
だから ぼくは ぼろであることを くにしない

ぼくは ぼろだからって こまったことはない
だから ぼくは ぼろで かまわない

ぼくは ぼろがいやだって おもったことはない
だから ぼろだって いわれても きにしない

ぼくは ぼろいがいのものに なりたくない
だから ぼくはずっと ぼろだ それでいい





karam.jpg

(カラムシ)








  雪清(ゆきさや)か襤褸も錦も全て抱く








Pretty Vacant by Sex Pistols

 


ちょっといっぷく その143 [付記]

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

久しぶりにお送りしたSS。クリスマスバージョンにしては
かなりえぐい内容で、申し訳ありません。(^^;;

短いんですが、それほど単純な話ではありませんので、内容
にしっかり踏み込んでおきたいと思います。


           −=*=−


ぐりーんふぃんがーずくらぶ日誌には、主人公いっきとその
彼女であるしゃらのカップルを含めて、たくさんのカップル
が登場します。

でも、同学年のカップルはほとんど出てきません。
シャイに服を着せたようなかっちん、なっつのカップルは、
その付き合いの中身が親しいいっきにすら見えませんし、そ
れ以外にどんなカップルがいるのかは、いっきには分からな
いんです。

もう彼女がいるから興味ないってのもあるんでしょうけど、
やきもち焼きのしゃらへの配慮も多分にありますね。(^^;;

唯一の例外が、今回取り上げたマカとゆいちゃんのカップル
なんです。

いっきは二人がくっつくプロセスに深く関わりましたし、そ
の後の経緯もよーく見ています。
それはマカやゆいちゃんにとっても同じで、二人は先行カッ
プルであるいっきとしゃらをよく観察してるんです。
ですからマカとゆいちゃんは、いっき+しゃらのカップルと
自分たちとの間に大きな違いがあることは認識しています。

彼氏彼女ともに訳ありという点ではたいした差はありません
が、カップル成立に至るプロセスがまるっきり違うんですよ
ね。

この小説の冒頭、いっきの前向き思考に惹かれたしゃらから
の告白で付き合いを始めた二人。でもその時にはまだ、いっ
きにしゃらへの恋愛感情がありませんでした。
いっきには恋愛に突き進めるだけの精神的余裕がなかったの
で、しばらくはしゃらの片想いに近かったんです。

初期のいっきとしゃらの関係は、恋人同士というよりむしろ
相互依存関係。いじめに抵抗し疲れた二人が、プロテクター
を外してそっと寄り添える精神空間を確保すること。
二人には、どうしてもそれが必要だったんです。

いっきが中庭プロジェクトを立ち上げ、しゃらが過去のしが
らみを吹っ切ったところで、初めてお互いを本気で意識し、
恋人としてのプロセスを踏み始めました。
そこまで進むのに、半年以上かかっているんですよね。

でも、マカとゆいちゃんのケースは違います。
想いは最初から双方向。そして二人の恋愛感情には余計なバ
イアスがかかっていませんでした。ごくごく普通の両想いで
すね。
ですから、ゆいちゃんの事件があってもなくても、何かきっ
かけさえあれば付き合いは始まっていたでしょう。

そういう両想いの場合、引力は非常に強力なんですが、相手
の実態や感情を確かめながら距離を縮めていくという中間プ
ロセスを全部すっ飛ばしてしまうことがあるんです。

しかも告白のきっかけはゆいちゃんが巻き込まれた事件でし
たし、その時のマカの家庭環境は最悪でした。
二人は、自分への好意を確認出来た時点で相手に逃げ込んで
しまったんです。
そらあ、ベタ甘になるのなんか当たり前ですよ。(^^;;

極度の共依存を、『大恋愛』と書かれたシールをべったり
貼って隠してる。
それが……マカとゆいちゃんのカップルなんです。


           −=*=−


本小説には、いっきたちより年上のオトナのカップルがたく
さん登場します。五条さんとタカは言うに及ばず、中沢先生
とかんちゃん、えびちゃん(旧おぎちゃん)と江平さん、
リックさんとしずちゃん、宇戸野さんと半田さん、行長さん
と糸井先生、山崎さんと阿部さん……。

こんなにカップルにしてええんかいなって感じもしますが、
経済的にも精神的にも成熟している大人は、単なる好き嫌い
だけで伴侶を決めません。相手に何を求めるか、自分が何を
提供出来るか、それを地に足つけて考え、二人での生き方を
模索します。

誰がどういう動機で伴侶を探すにしても、そこには自身の経
験や人生観が色濃く反映されます。本話の登場人物にも、当
然そういう背景を割り振ってあります。

でもね、いっきたちのような高校生はまだ被扶養者。
単純な好き嫌い以外の感情が入り込みにくく、カップルであ
ることの必然性がオトナに比べてうんと薄いんです。

行き来する感情はピュアなんですが、何せ線が細い。
好意を持続させるためのエネルギーが全然足りません。
だからラブ以外の不純物が入ると、こじれやすいんです。

未成年に発生しやすい恋愛熱と現実との落差。
それが分かりやすいのは、新潟旅行編での片桐先輩と八代目
(日浦準規)のエピソードですね。

運命的な出会いを経て恋愛感情がぱんぱんに膨れ上がった二
人は、一緒になりたい一心で『結婚』を口にしました。
その二人に、準規の父親や七代目宗喬が揃ってでっかい雷を
落としました。

生活する苦労も仲を持続させる苦労も知らないくせに、何が
結婚だ! ガキがのぼせやがって、バカヤロウ!
まあ……当たり前です。いっきも呆れてましたね。(^^;;

いっきの親は二人とも孤児。ですから、生活の苦労が骨の髄
まで染み込んでいます。
いっきは、質素で堅実な生き方を徹底する親の背中をずっと
見続けてきましたので、現実を置き去りにして恋愛感情だけ
が先走ることをものすごく恐れているんです。

でも。
彼女であるしゃらの家庭も逼迫した経済事情を抱えています
ので、しゃらは現状をよくわきまえています。
状況がいっきとよく似ていて価値観を共有出来るので、二人
のバランスはとてもいいんですよね。
# 苦労人同士のカップル。(^m^)

所帯じみていてじじむさいいっきですが、現実を見据えた上
で将来像をきっちり描こうとする姿勢は、しゃらにはっきり
見えます。それが、しゃらの信頼感、安心感に繋がっていま
す。

マカとゆいちゃんのカップルは、全然そのレベルに到達して
いません。
互いに対する好意だけがカップルを支配していて、先を考え
る余裕が二人にはまるっきりないんです。
# まだ高二だしね。(^^;;

僕は、ゆいに起きたアクシデントを気にしないよ。
そう言ってくれるおおらかなマカの姿勢は、ゆいちゃんには
確かにありがたいんですが。
ゆいちゃんのマカに対するリクエストは、本当はもっともっ
とデリケートなんです。

『わたしをもっと気遣って欲しい。心の傷に配慮して欲しい』

……なんですよ。

でもゆいちゃんは、それをマカに言い出せません。

なぜ? そりゃそうですよ。
ゆいちゃん自身が、新聞部のえぐい記者として他の子のデリ
ケートな案件を無神経にかき回してきたからです。
# ある意味、自業自得。
# 病室でも、いっきにきっちりねじ込まれてましたね。(^^;;

隠すという意図はなくても、事実として見える気持ちと見え
ない気持ちとがありますよね。
意思疎通が足りないことで生じる微妙なアンバランスが大き
な好意の流れの影に潜んでいて、いつか自分たちに向かって
牙を剥くんじゃないか。
そういう不安を、マカもゆいちゃんも漠然と感じているんで
す。

でも、互いの心の奥底に突っ込んで真意を確かめられるとこ
ろまでは、付き合いが深くなっていません。

しかも。二人の間にかなり大きな意識差があります。
しんどい状況の割には、お菓子のことをのほほんと考えてた
りするお気楽お子ちゃま気質のマカ。
マカに寄り添うために、無理は承知の上で歩き出そうと悲壮
な決意をするゆいちゃん。

男の子と女の子の精神発達速度のズレが、こういうところに
も顔を出しますね。

そして。
ゆいちゃんの自立は、心のリハビリが進んでからスタートで
すから、まだまだずーっと先の話。
でもマカの自立はゆいちゃんのこととは関係なく、もう待っ
たなしなんです。

そういう立場の差、危機感の差が、二人の間できちんと認識、
共有されていません。
これじゃあ、いっきでなくとも心配になりますよ。
危なっかしくてかないません。

今回アップした小さなクリスマスストーリーでは、好意以外
のものをどうやって盛り込むか、そのために自分はどうすれ
ばいいのかという『次』の視点を、ちょっとだけ二人に意識
させました。

いっきとしゃらのカップルも通ってきた道です。
少しだけ視点を先に置く……それが、二人の付き合いをより
深めることを切に祈りたいと思います。


           −=*=−


短いSSでしたが、『普通』という言葉や概念を多義的に
使って展開してみました。

何をもって『普通』と称するか。
実は、それには確固とした規定も概念もないんです。
普通ってのは、とても恣意的に使われる言葉なんですよ。

普通であると位置付けるのが、良いことにも悪いことにもな
りうること。
わたしたちは、今一度その意味を精査すべきなんじゃないか
なあと思ったりします。

自分を、無意識のうちに『普通』の檻に閉じ込める前に。


           −=*=−


さて。この後またしばらくの間、てぃくるでしのぎます。
本編再開までもうちょいお時間を頂戴します。m(_"_)m



ご意見、ご感想、お気づきの点などございましたら、気軽に
コメントしてくださいませ。

でわでわ。(^^)/



sk.jpg



「棚を吊ってみたんだが」

「何を乗せるんだ?」

「猿」

「お前用か」

「うきっ!」


(^^;;




サルノコシカケの仲間。
キノコとして見えるのは、まさに氷山の一角です。
キノコの本体である菌糸は、すでに材の中を縦横無尽に食い
荒らしています。(^^;;

 

 


【SS】 彼女にとって普通ということ (佐倉 唯(ゆいちゃん)) (二) [SS]


「ゆーいー、天交くんが来たわよー」

「わあい!」

タカトと一緒にいられる時間は、わたしにとってのゴールデ
ンタイム。
ネガティブな感情に押し潰されそうなわたしが、自分を取り
戻せる大事な時間だ。

一分一秒も無駄にしたくなくて、玄関までぶっ飛んでいく。
ああ……大好きなタカトの顔が、わたしを笑顔で包んでくれ
る。

「メリークリスマス、ゆいちゃん」

ちゃんは要らないのにー。
ママがいるから気を遣ったんだろなー。

でも、タカトは中に入ろうとしなかった。
玄関先で突っ立ったまま。

え? どして?

わたしがタカトから手渡されたお菓子の袋を受け取ったら、
少し寂しそうにタカトが微笑んだ。

「ごめんね。一緒にクリスマスを過ごしたいんだけど、お袋
が……」

えっ!?

ざあっと血の気が引いた。

「だ、だいじょうぶ……なの?」

「今回使ってる抗がん剤の副作用がすごく強くて。お袋、今
は動けないんだ。バイトの後で買い出しとかしないとなんな
いの。ごめんね」

「ううん、お母さんのことが一番だよ。しっかり看てあげて」

「ありがとう」

わたし以上に心配そうな顔をしてるママに向かって深々おじ
ぎしたタカトは、なごり惜しそうにドアをそっと閉めて。

……帰っていった。


           −=*=−


わたしは……自分の部屋で。ベッドの上で。膝を抱えて泣い
た。

「ぐすっ。ぐすっ。ひっく」

わたしは普通じゃない。普通なんかじゃない。
さいってーだ。

自分に何があったって、それはそれ。
今、ものすごくしんどいタカトのことを……もっと察してあ
げないとならないのに、自分のことばっか考えてる。
自分の傷ばっか見てる。

ねえ、ゆい。
あんた、いつからそんなにエラくなったの?
みんなが自分のことを慰めてくれて、気遣ってくれて当たり
前って……考えるようになったの?

タカトも、しんどい状況の中で必死にがんばってる。
自分の夢を諦めたくないって、もがいてる。
だから本当は……わたしのことなんか考える余裕はないのか
もしれない。

でも自由になるわずかな時間を割いて、わたしにプレゼント
を買って、わざわざ持ってきてくれたんだ。

ねえ、ゆい。
それは当たり前じゃないんだよ。
普通のことじゃないんだよ。

「……」

前にタカトと電話してて、すごく気になったことがある。
負けず嫌いで、実際に負けたことなんかなくて、だから自分
はすごくしっかりしてると思い込んでたって。
でも、どうしても勝てない相手がいることに気ぃついたって。

それは……自分。

負けてばかりでずっと辛い思いをしてきた工藤くんや御園さ
んは、自分の弱さにもう負けたくないって思いが強い。
だからいつも自分自身をどやしつけて、しゃにむに前進しよ
うとする。
そのエネルギーが、すぐ自分を甘やかす僕には全然足りない
んだよなって言ってたんだ。

タカトがわたしの中に見たもの。憧れたもの。
それは、一度決めたらぐらつかずに進み続ける強い意思だっ
たんだろう。
そして、わたしも自分がそういう人間だって思ってた。

でも……。

わたしは、あまりに普通過ぎた。
何があっても、どんな障害があっても、それを乗り越えて夢
を掴むんだっていう気迫とか決意とか……本当は全然なかっ
たんだ。ただ、自分の夢にぼーっと酔ってただけ。

それで……いいの?
タカトにずーっと誤解されたままでいいの?

よくないよね。
それじゃ、タカトは化けの皮が剥がれたわたしを見て幻滅す
るだろう。
わたしはタカトに捨てられてしまうかもしれない。

そんなの絶対にいやっ!!

わたしは……自分の弱さを……普通の女の子だってことをタ
カトにちゃんと理解してほしい。
でも。同じようにわたしも、タカトがスーパーマンなんかじゃ
なくって普通の男の子なんだってことを、きちんと理解しな
いとならない。

「ふう……」

今。
お母さんの闘病生活を支えてるタカト。
わたしはただもらうだけじゃなくて、あげられるものを何か
考えないとならない。

それは、わたしにとって辛いことじゃないよね。
タカトが喜んでくれることは、わたしにとっても幸せなこと
だもん。
それがいつか、わたしの恐怖や後ろ向きな感情を薄めてくれ
るだろう。

わたしは、普通の女の子だ。
でも普通だったら、普通の子に出来ることはわたしにも出来
るんだ。まず、そこから……始めよう。自分を動かそう。

「ママー。ちょっと出かけるー」

わたしはリビングに行って、テレビを見ていたママに声をか
けた。驚いたように振り向いたママが、まぶたを泣きはらし
たわたしを見て顔をしかめた。

「だいじょうぶなの?」

「少しずつ慣らさなきゃ。幼稚園のお見送りお出迎えじゃな
いんだから」

「……そう」

「すぐそこのコンビニに行くだけだよ。まだ昼間だし」

「そうね。そこから、ね」

「うん」




ox1.jpg

(オキザリス)








(補足)

ゆいちゃんこと佐倉唯は、マカと同じくいっきが二年生の時
のクラスメートです。三年でも同じクラスになりました。
ジャーナリスト志望の饒舌、快活な女の子で、新聞部の部員。
その取材姿勢、執筆スタイルはえげつなく、いわゆるゴシッ
プメーカー、壊し屋として有名でした。

でも運悪く、ゆいちゃん自身がスキャンダルの当事者になっ

てしまいます。
たちの悪いヤクザがヤンキーを使ってやらかしていた女の子
狩りに巻き込まれ、集団強姦の被害に遭ってしまいました。

警察に保護された直後に、なぜかいっきを病室に呼びつけた

いちゃん。いっきは、ゆいちゃんのマカへの恋慕を見抜
き、
自分の例をあげて心のリハビリに取り組むようアドバイ
スし
ました。

その後、いっきが仲人役をするような形でマカとゆいちゃん
が互いに告白しあい、晴れてカップルになったんですが。

めでたしめでたし……にはなりません。

ゆいちゃんの心には、まだ事件の傷が深々と刻まれています。
マカは、父親との衝突、母親の闘病、自分の進路の悩みと重
たい課題がてんこ盛り。

苦闘の時代が長いいっきやしゃらと違って、トラブルが起き
るまでは普通の高校生だったマカとゆいちゃんには、悲劇に
対する免疫がありません。
いっきは……そんな二人のことをすごく心配しているんです

よね。

 


【SS】 彼女にとって普通ということ (佐倉 唯(ゆいちゃん)) (一) [SS]


普通って、なんだろう?
他の人より優れてても劣ってても普通じゃなくなる?
じゃあ、わたしはもう普通にはなれないの?

わたしは、ものすごく頭がいいわけでも、かわいいわけでも、
気が利くわけでも、みんなに好かれるわけでもない。
自分では、ごくごく普通の女子高生だと思ってた。

違うの? わたしはもう……普通じゃないの?

「!!」

汗びっしょりで跳ね起きる。

「はあっ! はあっ! はあっ!」

クリスマスだっていうのに、朝っぱらからこんな冷や汗なん
かかきたくない。

それに……すごく息が苦しい。
胸のどこかに栓がはまって、呼吸を邪魔されちゃったみたい
な耐えがたい感覚。

「ゆい。あんた、大丈夫?」

わたしを起こしに来たんだろう。
ママが、わたしの真っ青な顔を心配そうに覗き込んだ。

「ちょっと……きつかった……」

ゆっくり、ゆっくり、深呼吸を繰り返す。

そうよ。ここは、わたしの部屋。
両親の他には誰もいない。
わたしは……何も心配しなくていい。

落ち着いて。
落ち着いて。

「ふうううっ……」

ベッドの上で固く目をつぶって、何度か首を振る。

落ち着け。
大丈夫。

「起きる」

「……。リビングにいるから」

「うん。着替えたら、そっち行く」

ママが、不安げに何度か振り返りながらわたしの部屋を出
た。

ベッドから両足を下ろして、床の感触を確かめる。
まだ……折られた方の足が痛むことがある。
でも、それは実際の痛みじゃない。

わたしの心を壊して、無理やり外に出ようとする恐怖感情。
それが暴れる時の痛み。想像痛だ。

もう一度、両手で顔を覆ってゆっくり首を振る。

あの時に……わたしを看てくれた五条さんていう婦警さん。
今でもわたしを気にして、時々電話をくれる。
わたしがしんどい時に、親身に相談に乗ってくれる。

その度に、繰り返し言われること。

「いい? 普通の生活に戻れたと思っても、必ずひどいフ
ラッシュバックが出るの。それも一度だけじゃなく、何度も
何度もね」

あの時のことは二度と思い出したくない。
だけど……思い出したくないのに鮮明によみがえって、わた
しを絶望のど真ん中に引きずり出す。

それが性犯罪被害の怖いところなの……五条さんはそう言っ
た。

もし。
もし五条さんが、エラい先生とか、常識人を気取ったオトナ
とかだったら、わたしは言われたことに全力で反発しただろ
う。あんたなんか、何もこの苦しみや辛さを分かんないくせ
にって。

でも五条さんは、自分も性犯罪の被害に遭って、ショックで
死ぬことまで考えた人だった。
婦警さんになってからも、わたしと同じように傷つけられて
しまった女の子のケアで体を張ってる。

その五条さんの言葉にはすごく重みがあって……わたしには
逃げ場がないんだ。

「忘れようとすることは出来るけど、実際に忘れるのは一生
無理だと思う。それなら、被害を受けた時以上の幸福をいっ
ぱい重ねて、少しずつ薄めていくしかないの」

うん。そうだね、五条さん。

普通だったわたしは、普通ではなくなった。
そして……もう二度と普通に戻れることはないんだって。


           −=*=−


「ゆい」

「んー?」

リビングで遅すぎる朝ごはんを食べてたら。
ママにいきなりお小言を食らった。

「午後から天交くんが来るんでしょ?」

「そー」

「少しは、女の子らしくしなさいよ。いくら天交くんが優し
いって言っても、彼に全部気遣いさせるのはおかしいんだ
よ? ったく」

「うー」

「クリスマスだっていうのに、何するでもないでしょ? 手
作りのものをプレゼントしなさいとまでは言わないけどさ。
少しは気を回しなさい」

「へーい」

ママのツッコミがちょー痛い。
その通りなんだけどさ……。

でもね、ママ。
わたしは気が利かないから何もしないわけじゃない。
したくても……出来ないの。

タカトに何かプレゼントしようとするなら、わたしは外で買
い物をしないとならないから。

夜。
繁華街の本屋に、注文してあった本を受け取りに行って。
その帰りに被害に遭ってしまったわたし。
あれ以来、夜でなくても外出するのが怖くなってしまったの。

学校への行き帰りも、ずっとしおみぃとタカトがついててく
れるからなんとかこなせてるけど。
本当は外で一人になりたくないんだ。

学園祭の時に展示した、新聞部特別号の取材。
あれだって、警察に取材に行く時には五条さんに送り迎えし
てもらってる。自力では……動けなかったの。

分かってる。
このままずっと、誰かの介助が必要な生き方なんてしていけ
ないって。

でも……まだ無理。
体につけられた傷は癒せても、心の傷は……なかなか治らな
い。自分がそんな弱い人間だったってことを認めたくないけ
ど……やっぱり虚勢は張れない。

わたしは。
普通の……どこにでもいる普通の女の子なんだもの。

 


【SS】 彼にとって普通ということ (天交高人(マカ)) (二) [SS]


いっきは……よく気が利くんだよね。
いや、気が利くっていうのとはちょっと違うかもしれない。
心の底を見透かすんだ。

前にバイトの相談をした時もそうだった。
僕の甘ちゃんのところをどやしたのは、父でも母でもない。
まだ付き合いの浅いいっきだった。

親からの自立を宣言しているのに、何も出来ないガキのまま
でいいの?

それは……どこにも逃げ場のないどやし。

同じ甘ちゃんの友達に言われたら、お互い様じゃんて思うけ
ど。家計をサポートするのに本気でバイトしてるいっきのど
やしには、何も反論出来なかった。

そのあと、進路をめぐる父との決裂が決定的になって。
余命のカウントダウンが始まっている母との暮らしが始まっ
て。
僕の甘えには受け皿がなくなった。
その時点で……余裕がどこにもなくなったんだ。

僕がゆいと付き合ってる時間は、僕にとっての唯一のオアシ
ス。ゆいだけでなく、僕はゆいと一緒にいる時間も大切にし
たいと思ってる。

でも……それはあくまでも僕の都合なんだ。
いっきと御園さんみたいに、互いを認め合うプロセスがまだ
全然足りない。恋人同士ではあっても、まだ形だけ。
普通じゃ……ないんだよね。

いっきの乾いた説明が、僕の自信をぐらぐら揺さぶる。

「ゆいちゃんは、最初からみんなにそう言われてるから違和
感ないだろうけどさ。天交くんをタカトって呼んでるのは、
ゆいちゃんだけでしょ?」

「うん」

「それは、ゆいちゃんにとっては特権だよ。僕は侵害出来な
い」

いっきは、僕だけでなくて、ゆいもちゃんと見てる。
そういう底なしの心遣いに、思わず嫉妬を覚えちゃう。

「すごいなー」

「なにが?」

「いや、そういう気遣いがさ」

「副作用だよー」

え?

「なんの?」

「しゃらの焼きもち!」

えええっ!? 思わずぶっこける。
よ、予想外。それは……知らなかったあ!

とってもそんな風に見えないけどなあ……。
分かんないもんだなー。

「な、なるほどねー」

「めんどくせーとは思うけど。配慮せんとさ」

「そっか」

「で、マカじゃだめ?」

「ほ?」

そうか。
名前をゆいに独占させるには、姓の方をイジるしかない。
でも、あまかいって呼びにくいんだよね。イメージ硬いし。
それを、そうやって砕くのかあ。うーん……。

「すごいなー。いっきのそういうセンス、天性のもんだね」

「まあ、友達増やすのに役に立つからね」

いっきが、ぱちんとウインクした。

「うん、それ、いいわ。マカ、かあ。じゃあ、いっきから広
げて」

「任しとき」

ああ……友達に恵まれたなあ。
勉強で勝ち負けを競わされる雰囲気が嫌で進学校じゃないぽ
んいちにしたのに、僕はみんなから煙たがられて友達が出来
なかった。でも……。

僕は本当に運がいい。
ゆいといっき。本当に僕のことを思ってくれる大事な恋人と
友達が出来たこと。

僕はそれを……普通のことだと思っちゃいけないんだろう。

いっきにぽんぽんと肩を叩かれる。

「たぶんさ。来年はマカと僕は同じクラスになる可能性が高
い。理系の生物込みでしょ?」

「あ、そうだね」

「そん時までに、照れなしで言えるように慣らそうや」

「んだね」

うねり出した列に押されるようにして、僕はいっきと別れた。

「じゃねー、またー」

「うん。またねー」

普通でありたい僕がいて、普通でいたくない僕もいる。
どっちかだけが正しいわけじゃなくて、きっとどっちも正し
いんだろう。

和菓子屋さんでクリスマスのお菓子を買う。
それが僕だけだったら、僕は普通じゃないのかもしれない。
でも、これだけ大勢のお客さんがお菓子を買いに来てるんだ
から、僕は普通なのかもしれないね。あはは。

列が進んで、やっと店内に入れた。

「いらっしゃいませー!」

アルバイトの女の子の威勢のいい声に弾かれて、僕はすぐに
ショーケースに目を落とした。

「わ!」

す、すご!
オーナメントが和菓子じゃん!
味の予測がまるっきり付かないって時点で、すでに普通じゃ
ない。

うーん……思わずうなっちゃった。

普通と普通じゃないのと、どっちがいいかって選ばなきゃな
んないなら。

やっぱ普通じゃないのがいいかなー。





ox2.jpg

(オキザリス)




(補足)

マカこと天交高人は、いっきが二年生の時のクラスメート。
ぽんいちでは一度もトップの座を譲ったことがない、ずば抜
けた成績を誇る優等生です。学力が図抜けているだけでなく、

プロ棋士の父親の薫陶もあって将棋の実力もプロレベルで、

将棋部の部長をやってます。

闘志や負けん気を表に出すタイプではありませんが、ものす
ごく気が強いです。根っからの勝負師ですね。でも、負けん
気が外からわからないために従順に見えやすく、息子をプロ

棋士の道に進ませたい父親と進路をめぐって正面衝突してし

まいます。彼自身は、医師志望なんです。

いっきは、マカが家を追い出されたあとのケアを五条さんと

一緒に手伝い、彼にすっかり懐かれてしまいました。いっき

にとっても、天才肌なのにどこか間が抜けてるマカは気の置

けない友達です。

クラスメイトの佐倉唯が恋人。甘党の彼らしく、二人の仲も
ベタ甘です。でも、それにはちゃんとわけがあります。

 


【SS】 彼にとって普通ということ (天交高人(マカ)) (一) [SS]


普通って、なんだろう?
他の人より優れてても劣ってても普通じゃなくなる?
じゃあ、だあれも普通の人なんかいないと思うんだけど……。

僕は普通じゃないのかなあ。
最近、僕はそれがすごく気になるようになった。

僕は、将棋の世界が好きだ。
ぎりぎりまで自分を研ぎ澄まして、戦略も、ひらめきも、駆
け引きも、はったりも、使えるものはなんでも使って相手を
打ち破る。
引き分けのないひりひりした勝敗の世界。それが好きだ。

勉強もそう。
自分をきちんと鍛えて研ぎ澄ましたことが、ちゃんと点数っ
ていう結果に現れる。
自分自身に課したハードルをきちんとクリア出来るか。
僕にとっては、嘘やごまかしが入らない点数の世界は自分の
評価にぴったりだと思ってる。

でも、点数にはそれしか意味がないんだよね。
僕は、点数の優劣を人と比べることには興味がない。

誰かが僕に、勝負にこだわれって命令してるわけじゃない。
歌が好き。ゲームが好き。友達と遊ぶのが好き。
他の子がそう考える同じレベルで、僕は将棋と勉強が好きな
んだ。

それは……普通じゃないんだろうか?

確かに勝ち負けにはこだわるよ。
でも僕は、なんでもかんでも勝負の世界に引きずり込むつも
りなんかない。そんな窮屈な生き方はしたくない。

自分をぎりぎりまで追い込むのは、将棋と勉強だけでいい。
それ以外は普通だと思ってるんだけど……。

違うのかなあ。

そんなことをぼんやり考えながら、僕はあるお店の入り口か
ら長ーく続いている行列の中に挟まっていた。


           −=*=−


クリスマスが近くなると、気分がうきうきしてくる。
だって、僕は甘いものが大好きなんだ。

どこの洋菓子屋さんでも、クリスマス用の気合いの入ったお
菓子を売り出すようになる。
それを食べ比べるのが、すごく楽しみなんだよね。
だから、市内の有名どころのお店は全部覚えてる。

中でも、口コミで評判を聞きつけたタルボットは別格。
あそこのケーキは衝撃だったなあ……。
単においしいってことだけじゃない。どの種類のケーキやお
菓子を買っても当たり外れがなかったんだ。
どれ一つ、妥協してないっていうかさ。

しばらく、どっぷりはまったんだよね。
でも、その後でもっとでかい衝撃が来るとは思わなかった。

そう。
寿庵を知ってしまったから。

二年生になってすぐ。
工藤くんからその店の名前を聞いても、最初はぴんとこな
かったんだ。
正直バカにしてたんだよね。和菓子なんて古臭いって。

いやいやいやいや、とんでもない。
寿庵のお菓子には、僕のお菓子に対する固定概念を木っ端微
塵にする破壊力があった。

それは、何にでも触手を伸ばして取り込んでいくアメーバの
よう。和菓子はこういうものだっていう決めつけを、徹底的
に拒否していた。
しかも、奇をてらったげてものなんかじゃない。
どれもすっごくおいしいんだ。

そりゃあ、おじいちゃんおばあちゃんみたいな年配の人から
見たら、あそこの新作お菓子は邪道なのかもしれない。
でも、工藤くんや御園さんがすっごいほめてたみたいに、僕
らみたいなガクセイにはすっごい引きなんだ。
手頃な値段でおいしいお菓子が食べられて、しかも他の店に
同じものがない。

ねえ、寿庵の新作、もう食べた? すごいよ!
そんな風に、友達にがっつり自慢できる。

おしゃれだとか、今風とか、斬新とか、そういう何かを狙っ
てお店を尖らせるんじゃなく。
作りたいお菓子を研ぎ澄ましたらこうなったみたいな、肩の
力が抜けた、でも完成度の高いお菓子。
そういう意味じゃ、寿庵は普通じゃない和菓子屋さんだ。

僕は寿庵を知ったことで、『普通』ってことの意味を深く考
えるようになった。

普通ってこと。
本当は、そんなのどこにもないんじゃないのかなって。


           −=*=−


「お、天交くん。仕入れ?」

げ。工藤くんやん。見られたくなかったなあ……。
でも、工藤くんは寿庵で買ったお菓子の袋を持ってる。
それなら同類だよね。まあ……いっか。

「わ、見つかったかー」

「僕も並んで買ったんだけど、オトコにはちと恥ずいわー」

「あはは。でも、どうしても買いたくてさー」

「うん。相変わらずすごいなーと思う」

おおお! それは期待大!

「工藤くんは、もう食べてみたの?」

「まだー。ってか工藤くんじゃなくて、いっきでいいよ」

そうなんだよね。
僕は普通だと思ってるんだけど、僕のクラスメートにとって
は、僕は近寄りにくいキャラなんだろう。
自分がそう見られてると思うと、僕も友達をあだ名で呼びに
くい。だから……どうしても距離が縮まらない。

工藤くんがブロークンで行こうって言ってくれたのは、本当
に嬉しかった。

「なかなか、ニックネームで呼ぶタイミングが掴めないもん
だね」

「んだ。僕も、同じクラスの中で、愛称で呼んでるのは半分
くらいだもん」

「そっか……」

友達の多い工藤くん……おっとっと、いっきでもそうなの
かー。僕は、正直ほっとする。

「じゃあ、お互いさまってことで、僕のことはタカト……と」

すかさず、いっきからダメ出しを食らってしまった。

「却下」

「ええー?」

今、愛称で呼べって言ったじゃん!

「どしてさ」

「ゆいちゃんにどやされるもん」

「あ……」

こういうところ。
僕には……すっごい自己中のところがある。
自分の中の一点に意識が落ちると、他に何も見えなくなる。

 


ちょっといっぷく その142 [付記]

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

しばらくてぃくるをお届けしてまいりました。
ちょっとだけいっぷくを入れて、そのあとで短いSSを二つ
お届けしようと思います。


           −=*=−


本編休止時の季節的なタイミングによって、てぃくるの明度
が変わってきてしまいますね。(^^;;

緑ものが多い時には、かなりおちゃらけた話が書けるんです
が、冬画像になるとどうしても想像力が縮んで辛気臭くなっ
てしまいます。

まあ、かき氷をとんかつにするのは無理がありますので、し
ばらくこんな感じで行こうと思います。


           −=*=−


さて。これからお届けする二つのSS。
一応、クリスマスの時の話ではあるんですが、クリスマスら
しい話ではありません。かなり、苦くて重い話になります。

登場人物は、二年生の時にいっきと同じクラスだった天交く
ん(マカ)と、その恋人の佐倉さん(ゆいちゃん)。

実はいっきとしゃらは、同学年ではっきりしたカップルって
のを他に知らないんです。
いっきとしゃらの親友であるかっちんとなっつは、二人揃っ
てものすごく臆病で照れ屋ですから、カップルとして目立つ
ような行動をしません。隠れカップルなんですよ。

でも、天交くんと佐倉さんのカップルは、オープンもオープ
ン。超オープン。学校公認みたいなものです。
もちろん、そうなる(そうする)必要があったんですけどね。

二人が付き合い始めたのは二年生の七月。付き合いを公式に
宣言したのは、その三ヶ月後の学園祭。
そしてこれからお届けするSSは、それからさらに二ヶ月
経ったクリスマスイブのお話になります。
二年生の頃に、少しだけ時間を戻しました。

『彼』である天交くんと『彼女』である佐倉さん、それぞれ
の心の動きを、別々の角度から追ってみたいと思います。
天交くんの方は、二年生編第157話でのエピソードが下敷
きになっていますので、それと突き合わせながら読むとおも
しろいかもしれません。

なお、超訳ありの二人が抱えている事情や背景については、
どうか二年生編の前半をご覧になってください。


           −=*=−


ついでに一つ宣伝を。

本館とカクヨムで、『半月』という長編小説をアップいたし
ました。
すでに全文アップ済みですので、お時間があればぜひ。(^^)



ご意見、ご感想、お気づきの点などございましたら、気軽に
コメントしてくださいませ。

でわでわ。(^^)/



hw.jpg



「デブのくせに、顔色の悪いバラだな」

「キュウリ食い過ぎたんや」



 

(^^;;





バラちゃいますよ。ハオルチアです。
葉の先が半透明になっていて、そこから光を取り入れます。
いわゆる、窓植物ですね。

 


てぃくる 281 散り敷く [てぃくる]



場所を譲っただけだよ


いつまでも僕らが上を塞いでいたら

君らが寒いだろ?




enk1.jpg

(エノキ)



それが強がりか。
本心からの言葉かは分かりません。

でも。
永劫に君臨できる王などどこにもいないのです。

王として、歴史に名を刻まれることが喜ばしいことでしょうか?
もうその時には何も出来なくなっているというのに。

務めを終えて散り敷く無数の王。
彼らはかつて、一人一人等しく王であり。
今は誰もが王座を降りて蒼天を仰ぎます。



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  王の無き世に在りてなほ王の群









The King Is Gone (For Miles) by Marcus Miller