So-net無料ブログ作成
検索選択

三年生編 第64話(3) [小説]

とかなんとかわいわいやってて、ふと思い出した。

「あ、ヤス」

理系関係者だけで盛り上がってたから関係ないって顔してた
ヤスに声をかける。

「なに?」

「おまい、志望はどっち系?」

「社系。あんまレベル高いところは狙わない」

「そか。来知大のパンフとオープンキャンパスの案内もらっ
たんだけど、要る?」

「お!」

今度はヤスだけでなくて、何人か女の子が吹っ飛んできた。

「ちょっと、くどーくん、来知大の人と知り合いなの?」

「教務課の人と知り合い。宣伝しといてくれってさ。パンフ
と案内どっさり預かってる」

カバンから出して机の上に乗せたら、あちこちから手が伸び
て、あっという間になくなった。

わお!

「お、おれの分ー……」

呆然とするヤス。げははっ!

「ヤスの分は、僕の方で確保しとくよ。今回パンフを送って
くれた奥村さんて人が、前にうちに来て大学のシステムとか
を丁寧に説明してくれたんだ。感じのいいとこだね」

「でも、いっきはそっち系じゃないだろ?」

「まあね。ちょっとトラブルの方で……」

「げ」

「そっちは大したことなかったんだ。それより、せっかく出
来たコネクションは生かしたい。先々、妹の進学先になるか
もしれないし」

「うーん、なるほどなー」

「八月下旬のオープンキャンパスにも誘われてるから、しゃ
らと行ってくる」

「あれ? 御園さんも工藤くんもそっち系じゃないよね?」

藤野さんが首を傾げた。

「大学ってとこの雰囲気を知りたいんだ。講義とか」

「ああ、なるほどなー」

「たくさん来て欲しいって言ってたから、ツアー組むで」

わははははっ!

うちのクラスがこんなに盛り上がったのは初めてかも。
体育祭ですらシラケてたのに。受験ネタだと盛り上がるのか
あ。

関口の作ったファイルにかじり付くようにして集中してペー
ジをめくっていた光岡が、ふうっと大きく息をついた。

「なるほどな。一般入試だけじゃないってことかー」

「私立はな。国公立は厳しいよ。AOや一芸の枠はまだ小さ
いから」

「だな。でも、選択肢が多いのは助かる」

「ああ」

そうか。光岡はまだ志望を固めてないんだろう。
ほっとする。

「なに見てるの?」

関口のファイルを囲んでわいわい騒いでいた輪の外から、え
びちゃんの声がした。

「エロ本見てますー」

「ごるああああっ!!」

わたわた慌てる関口。
ぎゃははははっ!

僕の混ぜっ返しに慌てて首を突っ込んできたえびちゃんは、
関口の力作を見て、絶句した。

「わ! す……すご」

「いやあ、さすが関口ですよ。でも」

「うん」

「本当は、学校できちんとこういう整理をして欲しいんです。
ただパンフとかを指導室に並べておくんじゃなく」

僕の苦言に、先生がまじめに頷いた。

「確かにそうね。受験担当者会議ですぐ議題に出します」

先生が前向きにさっと引き取ったのを見て、みんながほっと
してる。
そう。みんな、もうちょい積極サポートが欲しいんだ。

今、学校が全力で取り組んでるのは基礎学力の向上。
試験の中身を調整したり、模試の結果を見てプレッシャーを
かけたり。それは、僕らの地力を上げるための負荷だ。
でも負荷かけるだけじゃ、効果は今いちだと思う。

トレーニングする場所に、マシンだけでなくてスポーツドリ
ンクや軽食の無料サービスがあれば、僕らはよしもういっ
ちょ頑張ろうかっていう気になるんだよね。

前に、安楽校長にもお願いしたこと。
ムチだけでなく、飴がちゃんと欲しい。
そんな超高級の飴でなくていいからさ。
そこを……もうちょい学校側に頑張って欲しいなあ。

僕らをぐるっと見回したえびちゃんは、通る声でアナウンス
を出した。

「定期試験が終わってから終業式までの間は、進路に関する
面談期間ね。去年から義務は外してるけど、そういう情勢
じゃないでしょ?」

みんな、一斉に頷く。

「納得行くまで何度でも付き合うから、必ず声を掛けてくだ
さい」

先生は、しゃらに目を向けた。

「今、うちのクラスでわたしを一番利用してるのは御園さん
ね。模試や定期試験が一つ終わる度に、こまめにチェックし
ながら進路先を絞り込んでるの」

こくんとしゃらが頷いた。




共通テーマ:趣味・カルチャー