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三年生編 第64話(2) [小説]

「これから、こういう問題が組めるレベルの先生を、ぽんい
ちに続々送り込んでくるんだろなあ」

「瞬ちゃんは第一陣てことか」

「そう思う」

でも、うまいよね。
瞬ちゃんは、僕らが出来ないことを根性論に押し込まない。
僕らの努力不足のせいにはしないんだ。
時間だけだらだら使って勉強しても、実力なんか上がらない
もの。

現状を正確に把握して、どこをどうすれば苦手を克服出来る
か、地力が上がるか、その意識とテクニックを磨かせようと
する。

リョウさんの示唆にすっごく近いんだ。

「いいなあ……」

しゃらが、問題文を覗き込んでる。
他の教科は、まだ先生の意識がばらついてるんだろう。

「でも、えびちゃんの英語もぐんと難しくなってるし、他の
教科も徐々にハードルが高くなってきてるよ。外部模試との
落差は埋まってくるんちゃうかな」

「だな」

「あとは、夏をどうしのぐか、だ」

「おう」

「関口は夏期講習どうすんだ?」

立水がダイレクトに突っ込んだ。
関口が即答する。

「俺は市内の短期のやつを受ける」

「二週間?」

「いや、十日コース」

「それで間に合うんか?」

「AOと併せるからな。無駄を出したくねえ」

「工学系にもAOがあるんか!」

「私立はな」

一度自分の席に戻った関口が、大学の案内パンフがぎっしり
綴じ込まれた分厚いファイルを持ってきた。
書き込みのある付箋紙が、にょきにょき生えてる。

「うおおっ!」

「す、すげえ」

「さ……っすがあ」

しゃらも絶句してる。

「やる以上は、半端はしたくねえ。調べるなら徹底的に、だ」

さすが粘着質。
こだわりだすとはんぱねー。

「工藤は、これまで足で稼いで結果を出してる。その手法を
俺も今使ってんだよ」

ふむ。なるほど。

「見学?」

「ああ。オープンキャンパス待ってたんじゃ、埒があかん。
俺がやりたい研究してる先生のところに、直接見学申し込ん
でんだ」

思わず、全員のけぞった。

「す……げえ」

「やるぅ!」

「見せてくれるん?」

「いろいろだ。でも、うちに来ないかって声かけてくれた先
生もいたんだよ」

「!!」

「まさに、足で稼ぐだ。工藤の戦略(タクティクス)の破壊
力を思い知ったな」

「そっか。そこをAOで狙うってことか」

「ああ。まだ材料が揃ってねえ。だから一般入試の備えも外
さねえけど、方針固まったら、無駄は省く」

僕と立水と関口。
三人の中では、関口が一番最初にゴールに駆け込みそうだ。
むー……じわっと焦りとコンプレクスが……。
いかんいかん! 人と比べてる場合じゃない!

僕がじたばたしていたら、横からひょいと光岡が顔を突っ込
んできた。

「これ……すげえな」

「ああ、関口の力作だ。はんぱね」

「俺も見せて欲しいなあー」

てっきりだめって言うかと思った関口は、あっさりオーケー
を出した。

「俺の方針はだいたい固まったからな。使いたいなら使って
いいぜ」

おおー、太っ腹っ!

光岡が小躍りして喜んだ。

「関口大明神! 拝むぜ! なむなむなむっ!」

ぎゃはははははっ!!

なになになにって感じで藤野さんと海老原さんも吹っ飛んで
きて、分厚い大学パンフのファイルを見て驚嘆の声を上げた。

「すっごおい!」

「見せて、見せて!」

関口は、得意げ。喜色満面。
まあ関口にとって、このファイルは手塩にかけたフィギュア
みたいなものなんだろう。
自慢したい気持ちはよーく分かる。すっごい出来いいし。

ちぇー。僕もこういうの欲しいよう。


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