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三年生編 第62話(5) [小説]

しばらく黙っていたしゃらが、首を傾げた。

「でもさあ」

「うん」

「前からしつこかったけど、ここまでではなかったよね?」

「そう。たぶん、孤立したからだよ」

「孤立……かあ」

「確かに3Eはえげつないクラスだと思うけど、それなりに
こなれてきたじゃん」

「確かに」

「僕はずっとヤスとつるんでるし、立水や関口とも突っ込み
入れあってる」

「わたしは佐倉さんや藤野さん、永見さんと普通にやり取り
してるし」

「んだ。でも、未だに浮いてるのが何人かいるんだよ。その
一人が元原なのさ」

「てんくは?」

「あいつは、去年も中学の時もクラスで浮いてたらしい。1
Cの時が恵まれてたんだ」

「そっか……」

「それに比べて、去年は黒木と組んでバカやってた元原は、
黒木が距離置いたから急に浮いたんだよ」

「黒木くんがまともになったってこと?」

「本質はあんま変わってないと思うけど、黒木の方が受験を
まじめに考えてる」

「あっ! そうか」

「てか、うちのクラスにどんなにとんがりくんが多いって
言っても、そろそろギアが上がってきてる。夏期講習にも結
構行くみたいだし、夏休みは追い込み時期でしょ?」

「そうよね」

「それなのに、進路以外のしょうもないことを考えてりゃ必
ず浮くって」

「納得」

「あいつは、高岡のような全部下半身で出来てるっていうの
とは、少しだけ色合いが違うんだけどね」

「迷惑なのはおんなじだけど……」

「まあ、月曜に校長が動くでしょ。その結果を待つことにし
ようよ」

「そだね」

ふう……。

「どしたの?」

「いや、さっき、実生と話してたんだけどさ」

「うん」

「どうも……最近、僕は態度がでかくなった気がしてさ」

「へ?」

「そう言ったら、お兄ちゃんは最近じゃなくて、昔から態度
がでかいって」

しゃらが苦笑した。

「あはは……実生ちゃんも言うなあ」

「むっちゃ理屈っぽくなってたし、ちょっとしゃらや中沢先
生に対するものの言い方が激しくなってたかなーって。反省」

「そだね。でも」

「うん」

「それが、いっきでしょ。わたしは、それでいいと思うよ」

「いいの?」

「だって」

「うん」

「いっきは、最近わたしと話す時に間を作るようになった」

気付いてたか。

「前なら、だだあっと話してから、ね、そうでしょってとこ
があったけど。今は、わたしが何か言うのをちゃんと待って
てくれる」

「そっかな」

「今回弓削さんのこととかサプライズとかでへまって、久し
ぶりにいっきにがりがりがりっとやられて、なんか……」

「うん」

「懐かしかった」

どて。

「はは……」

「いっきは優しいもん。気分で振り回されたことないから、
わたしは大丈夫だよ」

「ありがと」

ほっとする。
でも、実生の警告はもっともだ。これから気をつけないとな。

「さて。じゃあ、がっつり追い込もう。期末を乗り切らない
と、それこそ夏期講習に響く。去年のことなんか言ってられ
ないよ」

「うん!」

あ、そうだ。

「それとさ」

「なに?」

「来知大の奥村さんて人から、八月後半にあるオープンキャ
ンパスに来ませんかってお誘いが来てるの」

「へえー」

「来知大は社系の大学だから僕やしゃらの志望には合わない
けど、大学ってどんなとこかなーって雰囲気掴むにはいいか
なーと」

「そだね。比較的近くにあるし、おもしろそう」

「県立大のオープンキャンパスは九月末だし、アガチスは女
子大だから学内に男子が入れないでしょ?」

「あはは! そう」

「夏休みに根詰めたごほうびには、タイミング的にちょうど
いいかなーと思ってさ」

「そだね。他にも誘っていい?」

「うん。いっぱい来て欲しいって言ってたから」

「分かったー!」




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