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三年生編 第59話(4) [小説]

「神様なんていない。そう、伯母さんだって神様じゃないん
だ。伯母さんを僕らと並べて見るなら、同じ目線で伯母さん
と話しないとならないの」

「そういうことかー」

「いばる必要も卑屈になる必要もない。今、こういう状態で
す。出来ることはこれだけです。きちんとそう言うだけ。伯
母さんは怒らないし、バカにしないよ。そんな状況じゃない
んだから」

「うん!」

すべきことから感情を切り離す。
とっても難しいことなんだけど、僕らはそれに挑んで行かな
いとならない。
それは弓削さんのことだけでなく、受験にも関わるからだ。

しゃらだけでなく、僕もまだそれがうまく出来てるとは言え
ないんだよね。訓練しなきゃなあ……。

「なに考え込んでるの?」

「いや、今日も模試だったんだけどさ」

「あ、そうだったんだ」

「出来はまあまあ。良くも悪くもなし。だけどさ」

「うん」

「最初の大コケしたやつ。問題見た時点で頭が真っ白になっ
たんだよね」

「範囲がズレてたってやつ?」

「そう。それって、自分の感情をコントロールし切れてな
いってことなんだよね」

「……」

「試験もそうだけど、いろんな事態が降りかかった時にそこ
から盛り返すなら、どうしても自分のネガを真っ先に抑え込
まないとならないと思う」

「そっか。あがったり、しょげたり、投げたり……」

「それじゃ、最初からアウトだよね」

「確かにそうだー」

「そこが、まだまだ甘いなーと思ってさ」

「……」

「リョウさんに叩き込まれた二つのキーポイント」

「うん。集中と効率化、だよね」

「もう一ついるんじゃないかなーと思う」

「それがさっきの?」

「そう。平常心。動じない心。集中出来るとしたらその結果
であって、感情が吹き出したら集中なんか無理だよ」

「うーん、なるほどなー」

「前からじじむさいじじむさいって言われてるけど、その割
には中身はまだまだガキだなあと思ってさ」

「ちょっとお、いっきがガキならわたしはどうなるのよう」

「わはははははっ!」

まあ、いいんちゃう?
伯母さんに、良くも悪くもそれがしゃらだって言ったけど、
感情が素直に見えるのは決して悪くないと思う。
ただ、ネガがだだ漏れになってる今のしゃらは、弓削さんの
ケアには合わないっていうだけ。

感情がダイレクトに見えるのは、りんも同じだ。
でも、りんには今ネガなことがないんだよね。
何を目指すか決まってて、受験もなくて、とりま母親との関
係が安定してる。生活も部活も充実してる。
そこが、家の事情に振り回されてるしゃらとはうんとこさ違
うんだ。

妹尾さんは、それをきちんと見抜いてくれるだろう。

とりま、昨日の夜の微妙な感情のもつれが薄れて、しゃらの
元気が戻った。
七日のプレゼンでゾンビになって立たれたんじゃ、それこそ
『中庭から元気を発信』なんか嘘っぱちってことになっちゃ
うからね。

「あ、そうだ。しゃら」

「なに?」

「イベ班の、例の引き締め」

「うん」

「僕は、板野さんを噛まさん方がいいと思う」

「……」

「必ず、うちのプロジェクトの中で始末して」

「どして?」

「板野さんを怒らしたら、もう一年生は御用聞きに行かなく
なるよ?」

「あっ!!」

「だろ?」

「そ、そっか」

「上級生が下級生を指揮するっていう形式を取ってない以
上、他の部に頭を下げろっていうしゃらたちの指導は一年生
たちには理解出来ない。ましてや、それを他部の部長さんか
ら言われたら、なんであんたの命令なんか聞かなあかんのっ
てなる。かえって逆効果」

「……」

「それよか、今後もイベントやるかどうかも含めて、一年生
の間だけでもう一回議論してくださいって投げ返した方がよ
くない?」

「うん……そうだよね」

「それにお金が絡んでるってこと。それを資料にして必ず付
けて」

ぱちん!
しゃらが指を鳴らした。

「そっかあ! その手があったかあ!」

「でしょ? 苦労してでもイベントを盛り上げれば、他部か
らの寄付を期待できるの。そういうところで少ない部費を有
効利用しないと、本当に保たない。もうボランティアベース
じゃないからね」

しゃらが、拳でがんがんと頭を叩いた。

「まだまだだなあ……」

「いや、それだけしゃらもいっぱいいっぱいだったんだよ。
家のことが何もなければしゃらも気付いたはずさ」

「はあ……そうかもしれない」

「まあ、なんとか乗り切ろうぜ。悪いことばっかじゃないか
らさ」

「そだね!」




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