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三年生編 第59話(2) [小説]

帰りのバスの中でも降りてから坂を上がる時も、今日の模試
の問題用紙を見ながらいろいろ考えを巡らせていた。

数学と生物は、まあまあ戻した。
問題は、化学だなあ……。記憶系と応用系が微妙に入り混じっ
てて勉強法が難しい。
嫌いだった物理の方が、その点はまだ楽だったかもしれない。

化学は、夏の重点強化項目にしよう。

そして、やっぱり英語がなあ……。
嫌いじゃない……ってか、むしろ教科としては好きなんだけ
ど、その割には取りこぼしが多い。
相変わらず出来不出来にむらがあって、えびちゃんからどや
されたことがちゃんと解消出来てない。

「むー……」

英語でいっしょくたにするんじゃなくて、その中でどこに弱
点があるかをもう一度きちんと洗い直さないとダメだ。
ここは、えびちゃんに再度アドバイスを仰ごう。

「よし、と」

これで、今回の模試の総合結果が偏差値60を越してくれて
ると、自分でも挽回がだいぶ進んだっていう自信になるんだ
けどなあ……。

手にしてたプリントをカバンにしまって、家の蛇腹ゲートを
開けようと思ったら。

幽霊みたいなしゃらがぼーっと立ってて、心臓が止まるかと
思った。

「うううううわわわ、お、おどかすなよう」

「……」

あかん。
完全に撃沈してもーてるわ。

「……。まあ、入って」

「……うん」

怒ってるって感じじゃないな。これは……自信喪失だろう。
それはそれで厄介なんだよなあ。

はあ……。


           −=*=−


ベッドに腰を下ろして、背中を丸めて、完全に意気消沈して
たしゃらが、ぼそぼそとしゃべり出した。

「わたし……ちっとも進歩してなかったんだね」

「……」

「ちょっと……自分自身にがっかりしちゃって」

はあ……。

「違うよ」

「え?」

「今のしゃらの状態で、なんでもしゃきしゃきこなせる方が
おかしいの」

「……」

「それは、しゃらがヘタレとか弱いとか、そんなことじゃな
い。僕がしゃらの立場なら、間違いなくへたれるって。それ
が当たり前なの」

「そ……なの?」

「例えてみるならさ」

「うん」

「父さんが突然失業して、母さんがそのショックでぶっ倒れ
て、実生がぶち切れて家出しちゃって。そのくらいのインパ
クト」

どごおん!
しゃらがぶっこけた。

「うわ……そうなん?」

「しゃらはさ。最初がまさしくそうだったんだよ」

「あ」

「だろ?」

「そうだ。そっかあ……」

「あの時よりはプラスのことが多いし、しゃらが場数を踏ん
でタフになった分しんどさを背負えちゃうの。まだ大丈夫
だって。でも冷静に見ると、しんどさはあの頃とあんま変わ
んない」

「……うん。そう。ほんとに……しんどい」

「それ、伯母さんに言った?」

しゃらが、ゆっくり首を振った。

「はっきり言った方がいい。妹尾さんがコーディネーターを
してるから、しゃらの心身の状態を見ながらケアの分担を決
めるはず。そこには私情を混ぜないよ。一番適した人、出来
るポテンシャルのある人にケアを任せる。そういう段取りを
するはず」

「そうかあ」

「足を怪我してる人に、全力で走って助けろって言わないで
しょ?」

「うん」

しゃらが、ほっとした顔を見せた。
はあっ……。思わず愚痴っちゃう。

「僕もなあ……今回は失敗しちゃったんだよね」

「え? どこを?」

「伯母さんしか頼れるところがなかったから、仕方なく話を
持ってったけど、ほんとはそうしたくなかったんだ」

「……」

「伯母さんに話を振る以上、僕は絶対に関わらざるを得ない。
でも、その関われる部分がものすごーく少なくなっちゃう」

「人にやらせて自分は……ってことね」

「そう。僕の大っ嫌いなパターン」

「……」

「でも森本先生や長友さんが匙を投げちゃうんじゃ、弓削さ
んに死ねっていうのと同じだよ。そっちも我慢出来ない」

「うん。どうしたらいいんだろうって……」

「思っちゃうよな」



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