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二年生編 第169話(6) [小説]

うん。その方法が難しい。
最初から素案で渡しちゃうと、彼らはきっとそれを丸飲みす
るだろう。
それなら、今日みたいに覚悟を促す意味がなくなる。
かと言って何も提示しないと、今までのやり方をそのまま踏
襲して、班割りを決めてくるだろう。

そうだなー……。

「最後の切り札でとっておくしかないね」

「どういうこと?」

わだっちが顔を突っ込んでくる。

「あくまでも主役は一年生さ。成功しても失敗しても、彼ら
にそこから経験を得てもらうしかない。だから、途中で変更
はありあり」

「うん」

「でも最初からどつぼると、モチベーションが上がんなくな
る」

「だよねー」

「でも、どつぼった時に一番保たないのは、旗振りさ。空し
いもん」

しゃらが、何かに気付いたようにふっと笑った。

「そっかあ……その時に、最後の切り札にするってことね」

「え? どゆこと?」

わだっちがほけた。

しのやんもかっちんも気付いたようだ。

「はっはー! いっきも相変わらず策士だなー」

「うん。そういうところは変わらないね」

腕組みして考え込んでたみのんも気付いたようだ。

「なるほどねー。それで部長と補佐を最初に決めろって言っ
たわけか」

「んだ」

最後まで分かんなかったらしいわだっちが白旗を上げた。

「こうさーん。ねえ、どゆこと?」

「いや……誰が部長をやるにしても、その子一人で全体まと
めるのは無理だよ」

「うん」

「部長、副部長だけでなくて、各班の班長さんと話し合いっ
てことになるでしょ?」

「そう」

「人数の少ない調整班は、必ずそこで不満を爆発させるよ」

「……」

わだっちもそこで気が付いたみたい。

「そっかー……。その時に部長から救済策として提案させるっ
てことね」

「そう。全部の責任がトップの二人に落ちてくるんだから、
その時には僕かしゃらにどうしたらいいって泣きついて来ざ
るを得ないでしょ?」

「で、その二人、もしくは部長だけに……」

「こそっとアドバイスするってこと。そして、それ以上の指
揮はしない。あくまでもヒントだけさ」

「なーるほどねー。あとはそれを使うかどうかも含めて、も
う一度仕切り直しさせるってことね」

「んだ」

かっちんが、満足そうにうんうんとうなずいた。

「俺たちも、なかなかガキから上がれねえなと思ってたけど、
それなりにどたま使えるようになったってことか」

それを、わだっちが即座に否定した。

「いや、うちが特殊なんだよ。他の部は大なり小なり揉め事
抱えてる。やっぱり考え方が小さい子を抱えちゃうと、いろ
いろ出てくるよ」

ふうっと小さな溜息をついたみのんが、こそっとこぼした。

「うちだって例外じゃないさ。今回のしきねとてんくみたい
なことは、必ず出てくるよ。必ずね」

今まであまりに順調過ぎたプロジェクトの運営。
でも、それはたまたまうまくいったに過ぎない。

仲間内のごたごたを考えていられないほどの難題が、いつも
プロジェクトの外にあったんだ。
だから、中の問題が目立たなかっただけ。
外の問題が小さくなればなるほど、今度は中の不協和音が目
立ちやすくなる。

でも、かっちんはどわっと笑った。

「まあ、欠点や揉め事のねえところなんか、どこにもねえよ。
あるのが当たり前だ。そいつで全部がぱあにならなきゃいい
のさ」

しのやんが、ノートをぱたんと閉じて同意した。

「だね。こんだけ楽しけりゃ、あんまり心配しなくていいと
思う。僕はね……」

しのやんが僕らをぐるっと見回した。

「調整部門だけじゃなくて、企画班自体もなくしちゃってい
いかなって思ったんだ。実務とイベントだけにする。今の企
画班は、ばらしてその中に混ぜ込んじゃう」

「へえー……踏み込んだな」

かっちんが、驚いてる。
しのやんは、かっちんの表情を見てくすっと笑った。

「さっきの話し合いで、かっちん自身が言ってたじゃん。お
もしれえ、じゃあやってみようかってのが原則だって」

「おう」

「まず楽しいってことが先にあって、いざやってみようと思っ
たら、いろいろやるべきこと、難しい課題が出て来た。じゃ
あ、どうする? みんなで解決策を考えよう。それで、いい
んじゃないかなあって」

「原点に戻せってことだな」

「うん、そう」

なるほどなー。
地味な調整役を、腐らず怠けずしっかりこなしてきたしのや
んの意見には強い説得力があった。

わだっちがてきぱきと話をまとめた。

「どっちにしても、わたしたちから後輩への積極アプローチ
はなしってことね」

全員賛成。

 


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