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第145話(2) [小説]

三つめ。

ばんこが持ち上げて首をひねる。

「こりゃまた、えらくぺらぺらやのー。なんじゃあ?」

「さあ、なんだろ?」

自分でやったみたいなてきとーな包み方。
包み紙の裏にマジックで走り書き。


『この前はケーキあんがとな。タカにまんまと乗せられてス
ルメ買い過ぎたんで、食うの手伝ってくれ。あご痛い』

『恩納文香』



ちゅどばあーん!

ばんこ、絶句。さとちゃんも、うなってる。

「さ、さすが恩納先輩……」

「やるなあ……」

なんも……言えません。

しのやんが呆れたように言った。

「ねえ、いっき。ここまで見事に色物ばっかだけど」

「最初っから期待なんかしてないよ。これまでもチョコなん
かもらったことも、期待したこともなかったし。おまけに、
メールで流したけどチョコ食えなくなっちゃったからさ」

さとちゃんが首を傾げる。

「アレルギーって、そんなにひどいん?」

「いや、アレルギーって書いたけど、ほんとは片頭痛の元。
月曜にちょっと実験してみたんだけど、チョコ食うと見事に
頭痛発作が出た」

「げ!」

「チョコは大好きなんだけどなあ。ちぇー」

「気の毒に……」

しのやんに同情されるのは、なんか悔しい。

四つめ。

オーソドックスなサイズの、いかにもチョコ入ってますって
感じ。
リボンはかかってない。でも、なんかえらく重いぞ。

義理系に見える。
開けよう。

んが?

「これって……」

しのやんは開いた口が塞がらないって感じ。

「どこからどう見ても、ラチェットドライバーのセットだよな」

「うーん」

小さなメッセージカードが付いてる。


『楽しいプロジェクトライフをありがとう。これからもよろ
しく』

『藤野美穂(みほ)』



さとちゃんとばんこが天を仰ぐ。

「食品ですらないってのがすごい」

「理系人間の思考回路は全く分からんわ」

僕はそれよりも、ドライバーにハートマークがついていない
かどうかの方が、よっぽど心配だった。

五つめ。

これは、靴箱にぎりぎり収まるかどうかのぎりぎりサイズ。
箱はでかいけど、重さは軽い。
一応リボンがかかってる。

開けてみよう。
がさがさ。

「おわっ!」

中から出てきたのは、ペンシルチョコ。
おおっ! ここに来て初めて本命のチョコの登場だっ!

って喜んでる場合じゃない。
一緒についてたのは……。

とんでもない量の文章が書かれた手紙の巻物だった。

しのやんが、それをじっと見て言った。

「僕は今、本末転倒という言葉をじっくり噛み締めている」

ばんことさとちゃん、大笑い。

差し出し人は、手紙を最後まで読まないと分からない仕組み
らしい。

空想と妄想が大爆発したラブレター。
僕という人間が、アメリカンヒーローのコスチュームを着せ
られて、ワイヤーロープで体育館の天井からぶら下げられてる。

見てる方はいいかもしれないけど、こっちはたまったもん
じゃない。
最初げらげら笑いながら見てた三人も、そのうち笑顔が消えた。

ばんこの顔が引きつる。

「なんか……ヤバいんちゃう?」

「うん、冗談なら勘弁して欲しい」

差し出し人は、1Dの須川菱子(すがわ りょうこ)さん
つー人だった。

知らん。

「とりあえず、うっちーに確認取るわ」

うっちーこと内田くんに電話。こういう時に、対象者と同じ
クラスの人がメンバーにいるのは助かる。
この件を話したら、爆笑。

「ぴしこの妄想がそっち行ったかあ。まあ、放っときゃまた
次のターゲット探すだろうから、気にしないで。構うと後が
大変だよ。徹底して放置プレイ、お願いね」

「へいへい」

にゃるほろ。

「どだったの?」

「うーぶ。相当な前科持ちらしい。構うなって言われた」

一同苦笑い。
食えないペンシルチョコの祟り食らっちゃたまらん。
やめ、やめ。

六つめ。

最後、か。

それは、義理チョコ用にたくさん売られてるハートチョコそ
のものだった。薄い包装から中身が透けて見える。

リボンはかかってない。
見るからに義理チョコ。

だけど、僕は強い違和感を持った。
僕が顔をしかめたのを見て、しのやんが突っ込む。

「なんか……変なの?」

「うん」

小さなメッセージカードが付いてる。
連名で、違う字体で書かれた短いメッセージ。


『ありがとう 鳳凰
 ありがとう 波崎互市(はざき ごいち)』


……。

ざわっ! 血の気が引くのが分かる。

「こっ、これは……ヤバい……ヤバ過ぎ」

「え? ただの義理チョコやん」

「送り主に覚えがない」

僕が見せたカードを見て、みんなが首を傾げる。

「なんじゃあ、こりゃ?」

「暗号か? 偽名か?」

「そんなん意味ないじゃん」

しのやんが、紙片を見ながらしばらく考え込んだ。

「……」

それから口元を指で押さえたまま言った。

「確かにすさまじいね。送り主の一つが架空の生き物。も
う一つが初代校長。オトコ、だ」

ばんこもさとちゃんも腕組みして紙片を見つめる。

「しかもメッセージが……」

「ありがとう、か」


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コメント 4

ひよこ豆

チョコレートで頭痛発作って、すごくリアルな話です('◇')ゞ

by ひよこ豆 (2012-02-14 12:55) 

そら

バレンタインデーってあちこちでいろんな思いがあるんでしょうね。
「ありがとう」って素敵な言葉です。
by そら (2012-02-14 21:53) 

水丸 岳

>ひよこ豆さん

一応、無関係ではないとされてるみたいですね。(^^;;
幸い、わたしはチョコで頭痛を起こしたことはない
ので助かってます。鼻血は何度か吹いてますが。(^^;;
by 水丸 岳 (2012-02-15 01:38) 

水丸 岳

>そらさん

想いの形や大きさや深さは様々ですから、チョコに
こめられるものもいろいろでしょうね。(^^)

ありがとう、も。
また然りかと。(^^)
by 水丸 岳 (2012-02-15 01:40) 

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