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第144話(3) [小説]

お昼をごちそうになって、帰宅。
バイト代は断った。

ゆずぽんが学生の時にされてた援農ボランティアと同じで
しょう。そう言って説得して。

さて。試験勉強の前に人体実験。
今、机の上に置かれているのは定番の明治の板チョコ。
それと……バファリン。

僕は、チョコは好きだ。
バレンタイン云々は関係なく、好きだ。
でも買い食いをあんましないんで、普段は食べる機会がない。

この前、チョコ食べることが片頭痛の発作のきっかけになり
うるってことを聞いて、ちょっとびびってる。

神様。
どうか、僕の頭痛とチョコが関係ありませんように。
せめて、鼻血くらいで留まりますように。

板チョコの包み紙を破って、中のチョコをぽきっと折り取る。

もぐもぐ。
うーん、おいしいよなあ。
とりあえず、半分くらいにしとこう。

さてと。仕込みはおっけ。

勉強しよ。

数学の問題集に向かって集中する。
気のせいか、妙に頭が冴える。
数式が目の中に飛び込んでくる。

ちかちか。
きらきら。

二時間経ったところで、一服。
うーん、今んところ大丈夫そうだな。
伸びをして、ほっと肩の力を抜いた途端だった。

ずぐん!

んげーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
きたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!

速攻でバファリンを飲む。

お願いっ!
お願い、効いてっ!
頼みますーーーーっ!!

僕の願いが通じたのか、単に鎮痛剤飲むのが早かったせいか
どっちかは分からないけど、頭痛はこの前ほどひどくは出な
かった。

でも……。
もろ、大当たりだったのね。
くすん。

のろのろと携帯を引っ張り出して、開ける。

ぱちん。
ぴっぴのぴ。

「うい、しゃら? いっきどぇす」

「あ、どしたの?」

「ちょっと人体実験してた。その悲しい報告」

「じんたいじっけーん?」

「うす」

ふう。

「僕はチョコ、あうと。病院の先生には言われてたんだけど、
もしやと思ってさっき試してみたんだ。やっぱりだめみたい」

しゃらが、わたわたうろたえてる。

「ど、どういうことっ?!」

「チョコ食べると片頭痛起こしちゃうんだ。この前みたいな。
今、鎮痛剤飲んでるけど、それでも痛い」

「げえーっ!!」

絶句するしゃら。
たぶん気合い入れて準備してたんだろうなあ。

僕も、悲しいよう。
初めてバレンタインにチョコもらえそうで、しかも僕の好物
なのにさ。

でも、あの頭痛地獄とチョコを天秤にかけたら、頭痛から逃
れられる方が優先。
あれは、死ぬほど辛いもん。

「分かった……」

消え入るような声のしゃら。
ごめんねー。でも、どうしようもないもん。

「じゃあ、また明日ね」

ぴ。

あと、プロジェクトの方にも連絡回しとかなきゃ。

『いっきどぇす。来るバレンタイン、想い人がいる方、いな
い方、皆々様がんばってくださいませ』

『なお、わたくし、冗談抜きでチョコアレルギーと判明しま
した。義理も含め、チョコ一切受け取りませんので、あしか
らずご了承ください』

『追伸 チョコ以外であれば、串団子だろうか、チーかまだ
ろうが、酢漬けイカだろうが受け付けます』


ううう、痛い。
悲しい。


           −=*=−


夕食の時に、浮かない顔してた僕に母さんが突っ込む。

「いっちゃん、作業の時になんかへましたの?」

「いや、ちゃんと仕事したよ」

「じゃあ、なんでそんな元気無いわけ?」

「片頭痛再発」

「げっ!」

「しかも、チョコが原因。さっき試してみたんだけど、やっ
ぱだめっぽい」

実生が、とっても気の毒そうな顔をする。

「お兄ちゃん、生まれて初めてチョコもらえそうだったのにね」

「しかも、チョコは好物だったのにさー。げっそり。がっくり」

父さんが、平然と。

「まあ、おれは自慢じゃないが、チョコなんか生まれてこの
方一度ももらったことはないぞ」

「あんなお菓子屋の陰謀にはまる方が、どうかしてんのよ」

母さんたら、激烈。

「バレンタインはともかく、チョコ系だめだとスイーツは選
択肢が減ってかなすぃ」

「まあ、スルメでも齧るんですな。にょほほ」

ちぇ。

「なんか、果物でチョコレートの味がするっていうのがある
みたいよ。今度探して試してみたら?」

「それはそれで悲しい。肉食べられなくて、豆腐でハンバー
グ作るみたいだ」

「ぎゃははははっ」

実生が馬鹿笑いする。
ちっくしょー。

部屋に戻って、ふと考える。

チョコレートの原料ってカカオだったよね。
それとは違う植物で、同じような味を持つものがあるってこ
とか。おもしろいなあ。

知らなかったことを知ることで、興味はますます深くなる。
それを知ろうとする力がますます強くなる。

僕は、昼間の山崎さんとの会話を思い出す。
無口で、まじめっていう顔しか知らなかった僕。
でも、あのわずかな時間の会話で、山崎さんの扉がいくつか
開いた。

それは……。
僕らに、山崎さんを知ろうとする力をくれた。

親方は、それも山崎さんの勉強になると踏んだんだろう。
仕事の向く先を考えろ、と。

市工の宇津木先生が言ってたね。
技術の出口を考えろ、それが何のためかを考えろって。
それと同じだ。

親方は、山崎さんに次のステップを踏ませるつもりなんじゃ
ないかな。

庭作りは表現の場。技術だけじゃ立ち行かない。
依頼者とのやり取りで、自分がよかれと思ったことと、依頼
者の理想とを摺り合わせないとならない。

ちゃんと、人と会話してそれを探り出せ。
そして、自分の見せ方を考えろって。

とと、ちょっと考え事するとこれだ。
頭痛がひどくなってきた。

いてて。
また薬飲まなきゃ。



blsap.jpg
今日の花:ブラックサポテDiospyros digyna


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コメント 8

まる

 こんばんは。
 バレンタインデーですよね。
お店に行くと、チョコレートのコーナーが賑やかで
見ているだけで楽しくなります。
 
by まる (2012-02-12 00:13) 

ふぢたしょうこ

バレンタインで成功した告白はなかったですね・・・
by ふぢたしょうこ (2012-02-12 02:33) 

tanoki

おはようございます。
ブラックサポテは柿に似てると思いましたが
柿の木科でやはり柿の木には違いないんですね。
色々勉強になります。
by tanoki (2012-02-12 07:58) 

ぽちの輔

ご訪問&nice!ありがとうございました。
by ぽちの輔 (2012-02-12 11:53) 

水丸 岳

>まるさん

コメントありがとうございます。(^^)

なぜチョコなんだあという他のお菓子の叫びが聞こえ
そうですが、それはそれ。(^m^)
なんか、わくわくしますよね。(^^)

by 水丸 岳 (2012-02-12 22:55) 

水丸 岳

>ふぢたしょうこさん

コメントありがとうございます。(^^)

ずーっと傍観者であったわたしにも、ないですねえ。
何事も。(^^;;

まあ、傍で見てる分には楽しかったですが。(^m^)

by 水丸 岳 (2012-02-12 22:57) 

水丸 岳

>tanokiさん

コメントありがとうございます。(^^)

わたしもこいつを育てているんですが、柿八年くらい
では花実が着かなそうです。(^^;;
もともと熱帯のものですからねえ……。(^^;;


by 水丸 岳 (2012-02-12 22:59) 

水丸 岳

>ぽちの輔さん

またお邪魔いたしますねー。(^^)


by 水丸 岳 (2012-02-12 23:00) 

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