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このおはなしについて


ご訪問ありがとうございます。(^^)

 ぐりーんふぃんがーずくらぶ日誌は、父親の転職に合わせ
てとある街の新居に引っ越してきた男の子、いっきこと工藤
樹生(いつき)の高校生活三年間を、主人公本人が日誌のよ
うな形で綴って行く小説です。基本、一日で一話が完結する
オムニバス形式になっています。

 通い始めた田貫第一高校(ぽんいち)の荒れた中庭を再生
する。いっきの小さな思いつきは、やがて多くの人々を巻き
込んで、いっき本人が思いもよらなかった様々な人間模様を
生み出すことになります。

 恋人になるしゃらこと御園沙良(みその さら)、親友と
していっきと絡むかっちんこと中塚勝広(なかつか かつひ
ろ)となっつこと井本夏乃(いもと なつの)、いっきたち
を支える生物教師の中沢瑞宝(なかざわ みずほ)と婦警の
五条千咲(ごじょう ちさき)。

 そして、いっきやしゃらの園芸の先生として二人の生き方
に深く関わるようになる隣家のおばさん、会長こと波斗聡子
(はと さとこ)。

 いっきはたくさんの人々との関わりを介して、何を見て、
何を感じて、その高校生活を駆け抜けて行くのでしょうか?
そしてそれを、どう自分の未来につなげていくのでしょうか?

 長い長いおはなしになると思います。どうかお暇な時にで
も、ご一読いただければ幸いです。(^^)



                    水円 岳 拝


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認証は『4』一文字です。
「よんでね」ということで。(^m^)


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三年生編 第60話(2) [小説]

そうか。
会長が予想した通りだ。学校の先生が一人も入ってない。
なるほどなあ……。

鈴ちゃんが審査員の先生たちの前に一歩進み出て、もう一度
深々と頭を下げた。

「わたしは、ハートガーデンプロジェクト部長の鈴木則子と
言います。今日はよろしくお願いします!」

鈴ちゃんを挟み込むように四方くんと菅生くんが前に進み出
た。

「僕は副部長の菅生君彦です。よろしくお願いします」

「プロジェクトのジェネラルマネージャーをやってる四方透
です。よろしくお願いします!」

審査員の先生たちが、四方くんの肩書きを聞いて、おーっと
驚いてる。わはは。

鈴ちゃんが、僕らの方を一度振り返ってから、説明を追加し
た。

「プロジェクトは現在部員が72名。顧問の中沢先生と、あ
とはサポーターという構成になっています」

僕らは全員でゆっくり頭を下げた。

「サポーター……ですか?」

滝本さんていう女の人が、審査委員長なんだろう。
鈴ちゃんの説明に小首を傾げた。

「ええと、そこは、後で初代部長の工藤先輩から説明がある
と思います」

「分かったわ」

プロジェクトの執行部の紹介が終わったところで、審査員の
先生にハンドマイクが渡された。

僕らは、審査をどんな風にするのかを聞かされていない。
プレゼンの準備はがっつりしたけど、それが出来るかどうか
もまだ分かんないんだ。
先生たちがどんな審査をしようとするのか、どんなオーダー
を出し、どんな質問をするのか、まだ何も分からない。

どきどきの瞬間。

滝本さんが、マイクを握って笑顔で僕らに話し掛けた。

「こんにちは!」

全員で声を張り上げる。

「こんにちはーっ!!」

「おおっ、やっぱりみんな元気がいいわねえ! 気持ちがい
いです」

にこにこ笑いながら、滝本さんが話を続ける。

「本日こうしてお邪魔しましたが、実はわたしたちの審査は
もう終わっています」

げ……。

場が凍りついた。

「庭というのは、印象が全てです。わたしたちが見た時にど
ういう印象を受けたか。それだけなんです。説明も配慮も要
りません」

……。

「……なんですけどね」

おとと。

「今回こちらにお邪魔させていただいたのは、そういう印象
の枠に収まらない大きなエネルギーを感じたから」

うん!

「正直、庭のデザインや完成度という点ではまだまだ物足ら
ないのは事実です。ですが、ビデオで見せていただいた造営
までのプロセスがとても衝撃的でした」

滝本さんの言葉に、他の二人の先生も大きく頷いた。

「本当? あのビデオで紹介されていたプロセスって、本当
なの? わたしたちはヤラセじゃないのかって疑ってます」

うわ、挑発するなあ。

「ぜひみなさんのエネルギーで、わたしたちの疑いをぶっ飛
ばしてください。楽しみにしてます!」

うまい! さすが、審査員をするだけあるなあ。

滝本さんの最初の一撃で青くなってた鈴ちゃんは、気持ちを
さっと立て直した。

「分かりました! さっそくプレゼンさせてもらっていいで
すか?」

「よろしくね」

「はい!」

鈴ちゃんがさっと手を上げたのに呼応して、僕と江本さんが
前に出る。

「まず、なぜわたしたちの活動にプロジェクトという名前が
付いているのか。そこからプレゼンを始めたいと思います」

審査員の先生たちは揃って頷いた。
そうなの。応募した書類やビデオには、なぜプロジェクトな
のかという説明は一切入ってない。

四方くんが中心になってまとめたビデオでは、最初はプロジェ
クトが出来た理由、つまり『過去』が入ってたの。
それを僕としのやんが全部削らせた。

新入部員の確保じゃなくてコンテストの応募のためなら、後
ろ向きの部分を見せるのはかえってマイナスの印象を与える
よって。
それよか、鈴ちゃんや四方くんの『今』をばっちりカッコよ
く見せた方がいい。

だから今鈴ちゃんたちがやってる合意形成やプランニングの
プロセス、作業風景は丁寧に撮影されてるけど、昔の話は一
つも出てこない。

プロジェクトっていう名称と、今の姿とは必ずしも一致して
ないんだよね。
部長会でも突っ込まれたみたいに、なんでプロジェクトなの、
部じゃダメなのっていう疑問符が付いて回る。
でも、そこをミステリーのままにしておいた方がおもしろい
じゃん!

今回の受賞では、間違いなくそこがキーポイントになったん
だ。僕や鈴ちゃんにとっては、してやったりなんだよね。

先生たちが来られてる今。
今こそ、そのミステリーの謎を解こう。

それは先生たちへのアピールであると同時に、一、二年生た
ちにこれまでの経緯をしっかり教える大事な機会でもあるん
だ。
何があったかが問題なんじゃない。それをどう乗り越えたか
が重要なの。そこをきっちり見せたい。



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